オーディオの世界には、時折「常軌を逸した」としか形容しようのないプロダクトが登場する。それは、コストや製造効率といった凡百の制約を一笑に付し、ただひたすらに理想を追求した結果生まれる、一種の工芸品だ。コロラド州デンバーに拠点を置くYG Acousticsは、まさにそんな狂気(あるいは情熱)を原動力とするメーカーである。彼らはスピーカーを「鳴らす」のではなく「加工」する。共振や歪みという名の不純物を、航空宇宙グレードのアルミブロックから削り出し、排除していく。その哲学の現時点での一つの到達点が、今回レビューするSonja 2.3iだ。
このスピーカーは、音楽をどう聴かせるかという問いに対し、「録音されたままに」という、あまりにも純粋で、そしてある意味で残酷な答えを突きつけてくる。本稿では、この音響の彫刻が、いかなる技術的背景から生まれ、我々の耳に何を届け、そしてハイエンドオーディオ市場においてどのような存在意義を持つのかを、競合ひしめく荒野のど真ん中から忖度なく解き明かしていこう。
YG Acoustics Sonja 2.3i — Overview
まずは、この巨大なアルミの塔のプロフィールを簡潔にまとめておこう。
- メーカー / 設立: YG Acoustics / 2002年 1
- 本拠地: 米国コロラド州デンバー、英国ケンブリッジ 3
- 型番: Sonja 2.3i
- 発売日: Sonja 2シリーズの登場後、DualCoherent 2クロスオーバーを搭載した「i」モデルとしてアップグレード提供が開始された。具体的な日付は不明だが、2019年以降に市場に登場し、2023年時点でも現行モデルとしてディーラーに展示されている 4。
- 価格帯:
主要スペック
- 形式: 3ウェイ 5ドライバー、パッシブ、密閉型フロアスタンディング 9
- ドライバー構成:
- ツイーター: 1インチ BilletDome™ (ForgeCore™モーター搭載)
- ミッドレンジ: 2 x 6インチ (15 cm) BilletCore™
- ウーファー: 2 x 10インチ (26 cm) BilletCore™ 9
- クロスオーバー: 独自技術 DualCoherent™ 2 (65 Hz, 1.75 kHz) 9
- 周波数特性: 20 Hz以下から40 kHz以上まで再生可能 9
- 公称偏差: 可聴帯域内 ±1 dB、クロスオーバー帯域における相対位相 ±5° 9
- 能率: 88 dB / 2.83V / 1m 9
- インピーダンス: 公称4Ω (最小3Ω) 9
- 寸法 (高さx幅x奥行): 179 × 43 × 72 cm 9
- 重量: 205 kg (1本あたり) 9
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1. 世評の交差点 — Sonja 2.3iレビュー総覧
この規格外のスピーカーは、世界中のオーディオファイルや評論家からどのように受け止められているのだろうか。いくつかのレビューを俯瞰し、その共通項と特異点を探ってみよう。
| メディア | 引用抜粋 (和訳+原文) | 評価点 | Bias Check & Commentary |
|---|---|---|---|
| Audiodrom | 「YGのダブルベースに完全に恋をした…それは真にアコースティックな楽器だった…私が今まで聴いた中で最も忠実な再生だったと言える」 (“I absolutely fell in love with the double bass through the YG…it was a truly acoustic instrument…I dare say it was the most faithful playback…I have ever heard”) | ★★★★★ | 潜在的バイアス (ディーラーレビュー): レビューサイトはYGディーラーであるDreamAudioと関連がある 12。しかし、内容は非常に具体的で、単なる賛美に終わっていない。特に「wow effectに欠ける」点にも言及しており、信頼性は高い。音色の正確さという核心を突いた評価だ。 |
| Hi-Fi Voice | 「彼らはどんなwow effectにも欠けており、セットアップを慎重に選び、その音に慣れる必要がある」 (“they lack any wow effect and it is necessary to carefully choose the set-up and get used to their sound.”) | ★★★★☆ | 中立的視点: チェコのメディアによるこのレビューは、YGサウンドの本質を的確に捉えている。極限の技術的精度と、それがもたらす非情なまでのニュートラルさ。脚色を排した音に慣れる時間が必要だという指摘は、多くのユーザーが経験することだろう。非常にバランスの取れた客観的な評価と言える。 |
| The Absolute Sound | 「Sonja 2.3は、壮大な存在感、ソースへの透明性、そして触知感を備え、ワールドクラスのパフォーマンスを提供する」 (“Sonically, the Sonja 2.3 delivers world-class performance, with a spectacular sense of presence, transparency to sources, and palpability.”) | (Editors’ Choice 2022) | 潜在的バイアス (業界誌): TASのような権威ある雑誌のアワードは、主要な広告主との関係性を完全に無視することは難しい。評価の言葉も「ワールドクラス」「壮大」といったやや定型的な表現に留まる。製品がトップティアであることの証明にはなるが、深い洞察というよりはハイレベルな推薦状と捉えるべきだ。 |
| AudioShark Forum | 「YGが本当にできることを聞きたいなら2.3iが必要だ…ベースモジュールを追加すると、スピーカーは全く異なるリーグに入る」 (“you need the 2.3i if you want to hear what YGs can really do…Adding the bass modules moves the speakers into a totally different league.”) | (ユーザー意見) | オーナー視点 (確証バイアスの可能性): 投稿者は明らかにYGの上位モデルのオーナーであり、その選択を正当化したいという確証バイアスが働いている可能性がある。しかし、アップグレードによる「スケール感」の向上という具体的なメリットを提示しており、購入を検討する者にとっては貴重な実体験に基づく意見だ。同スレッド内の「2.2iの方が凝集性がある」という反対意見と合わせて読むことで、より立体的な理解が得られる。 |
集計と考察:
世界中のレビューを総合すると、一つの明確なコンセンサスが浮かび上がる。Sonja 2.3iは「スロースターター」である、ということだ。派手な音作りや耳当たりの良い脚色で一瞬で聴き手を魅了するタイプではない。その真価は、長時間聴き込むことで初めて理解される。絶対的なニュートラルさ、音色の正確性、そして揺るぎない位相特性。これらの美点は、聴き手がスピーカーの存在を忘れ、音楽そのものに没入した時にこそ輝きを放つ。
これは、Hi-Fi Voice誌が指摘する「wow effectに欠ける」 14 という評価や、Audiodromの「20分で判断するなら、もっと良いスピーカーを聴いたことがあると思うだろう」 11 という記述と完全に一致する。彼らはこれを欠点としてではなく、このスピーカーの根本的な性格として描写しているのだ。YGが公言する「ボイシングをしない」という哲学 18 が、そのまま音となって現れている証左に他ならない。このスピーカーは、美しいステンドグラスではなく、どこまでも透明な窓なのだ。
2. 鋼の肉体、精密なる心臓 — 技術的特徴の深掘り
Sonja 2.3iの音を理解するには、その成り立ち、つまりYG Acousticsというメーカーの設計思想そのものを解剖する必要がある。彼らのアプローチは、いくつかの核となる独自技術によって支えられている。
思想の根幹:「ボイシングをしない」という哲学
まず理解すべきは、YGのスピーカー作りにおける根本思想だ。彼らにとってスピーカーは、それ自体が音を奏でる「楽器」ではなく、録音された情報を寸分違わず再現するための「測定器」であるべきなのだ 18。そのため、設計プロセスにおいて主観的な「音決め(ボイシング)」を徹底的に排除する。設計はシミュレーションと測定によって行われ、もし試聴で違和感があれば、その原因を再び測定データに立ち返って探し出し、技術的に解決する。この科学的アプローチこそが、YGサウンドの原点である。
BilletCore™ドライバー:削り出すことで生まれる究極の剛性
YGの代名詞とも言えるのが、このBilletCore™ドライバーだ。一般的なスピーカーコーンがプレス加工や成形によって作られるのに対し、BilletCore™は7 kgもの航空機グレードアルミニウムの塊から、CNCマシンで数時間をかけて削り出され、最終的にわずか30 g、厚さ0.2 mmのコーンとなる 11。 この常軌を逸した製法の目的はただ一つ、コーンの分割振動(cone breakup)の完全な排除である。プレス加工で生じる金属のストレスを皆無にすることで、驚異的な剛性を実現し、いかなる大入力に対してもコーンが変形することなく、理想的なピストンモーションを維持する 10。その音響的な狙いは、電光石火のトランジェントと、歪み感のない広大なダイナミクスだ 11。
DualCoherent™ 2クロスオーバー:時間と音色、二兎を追う者のための武器
マルチウェイスピーカーの永遠の課題は、各ドライバーをいかにスムーズに繋ぐか、という点にある。多くのメーカーは、周波数特性(音色)の平坦さを優先して時間軸(位相)の整合性を犠牲にするか、その逆か、という妥協を強いられる。 YGは、創業者Yoav Geva氏が軍のデジタル信号処理技術者だった経歴を活かし、この二律背反を克服する独自のソフトウェアを開発した 19。それがDualCoherent™クロスオーバーだ。これは、周波数特性を定規のようにフラットに保ちながら、ドライバー間の相対位相をほぼゼロ(±5°)に揃えることを可能にする 10。 特にSonja 2.3iの「i」が示すDualCoherent™ 2へのアップグレードでは、この厳格な位相管理がツイーター/ミッド間だけでなく、ミッド/ウーファー間にも適用された 22。これにより、音像は一点から放出されるかのように定位し、揺るぎないサウンドステージが構築される。これこそが、多くの人がYGサウンドの「秘密のソース」と呼ぶ技術の核心である 23。
航空機グレードアルミ筐体:沈黙こそが最大の貢献
これら高性能ドライバーと精密なクロスオーバーの性能を最大限に引き出すため、YGはエンクロージャーにも一切の妥協を許さない。筐体はすべて、巨大なアルミプレートから精密に削り出され、加圧アセンブリという特殊な工法で組み立てられる 18。 YGがアルミを選んだのは、見た目の美しさのためではない。彼らの測定によれば、航空機グレードのアルミこそが、現実的な素材の中で最も剛性が高く、共振しにくい素材だったからだ 20。完全に「沈黙」する筐体があって初めて、ドライバーが発する純粋な音だけを聴き手に届けることができる。
これらの技術は、単なる特徴の寄せ集めではない。自社で最高峰のCNC加工機を保有するという製造能力が、BilletCore™という他に類を見ないドライバーの創出を可能にした。そして、その高性能ドライバーを完璧に統合するために、DualCoherent™という精密なクロスオーバーが必要とされた。さらに、そのシステム全体の性能をスポイルしないために、究極的に無共振なアルミ筐体が生まれた。一つ一つの技術が、互いを必要とし、互いを高め合う。これこそがYG Acousticsの設計思想の全体像であり、深く相互接続された技術的エコシステムなのである。
頂上決戦:ウルトラハイエンド・スピーカー仕様比較
YGの特異なアプローチをより明確にするため、同価格帯のライバルたちと仕様を比較してみよう。各社が頂点を目指すために、いかに異なる哲学と技術的アプローチを採っているかが一目瞭然となるはずだ。
| Feature | YG Acoustics Sonja 2.3i | Wilson Audio Alexx V | Magico M3 | Rockport Technologies Lyra |
|---|---|---|---|---|
| 価格 (USD) | ~$140,000 7 | ~$145,000 24 | ~$94,000 25 | ~$190,000 26 |
| エンクロージャー素材 | 航空機グレードアルミ削り出し 11 | 独自開発 X/Vマテリアル複合材 27 | カーボンファイバー/アルミ複合 28 | アルミ鋳造 DAMSTIF™ 複合材 29 |
| 形式 | 密閉型 18 | バスレフ型 (前方/後方可変) 30 | 密閉型 28 | バスレフ型 (後方) 31 |
| ウーファー | 2x 10” BilletCore アルミ 9 | 1x 10.5”, 1x 12.5” パルプ系複合材 30 | 3x 7” Graphene Nano-Tec 28 | 2x 10” カーボンファイバーサンドイッチ 29 |
| ミッドレンジ | 2x 6” BilletCore アルミ 9 | 1x 5.75”, 1x 7” パルプ/シルク複合材 30 | 1x 6” Graphene Nano-Tec 28 | 2x 6” カーボンファイバーサンドイッチ 29 |
| ツイーター | 1” BilletDome (シルク/アルミ複合) 9 | 1” CSC (カーボンファイバー製) 32 | 1” ダイヤモンドコート・ベリウム 28 | 1” ベリウム (ウェーブガイド付) 29 |
| 能率 | 88 dB 9 | 92 dB 30 | 91 dB 28 | 90 dB 29 |
| インピーダンス (公称/最小) | 4Ω / 3.0Ω 9 | 4Ω / 2.0Ω 30 | 4Ω / - 28 | 4Ω / - 29 |
| 重量 (1本あたり) | 205 kg (452 lbs) 9 | 227 kg (500 lbs) 30 | 145 kg (320 lbs) 28 | 254 kg (560 lbs) 29 |
この表は、各社のアプローチの違いを雄弁に物語っている。ドライバー素材一つとっても、YGの「削り出しアルミ」、Magicoの「グラフェン」、Wilsonの「パルプ系」、Rockportの「カーボンファイバー」と、まさに百花繚乱。エンクロージャー形式も密閉型とバスレフ型に分かれ、それぞれが信じる最高の音を実現するための手段が全く異なることがわかる。
3. 測定器は嘘をつかない — 客観データからの考察
これまで、Sonja 2.3iの客観的な測定データは、近しいモデルからの推測に頼らざるを得なかった。しかし今回、チェコのオーディオ専門誌「Hi-Fi Voice」によるSonja 2.3iそのものの詳細な実測データを入手することができた。これにより、我々はこのスピーカーの性能を、より深く、そして正確に分析することが可能になる 14。
周波数特性:公称値通りのフラットネス
測定結果は、YGが主張する「可聴帯域内±1 dB」という極めて野心的な公称値を裏付けるものだった。軸上周波数特性は、部屋の影響を受ける200Hz以下の低域を除き、驚くほどフラットな特性を示している。特に、軸上(赤線)と30度オフアクシス(黒線)のカーブが近似している点は注目に値する。これは、リスニングポイントが多少ずれても音色バランスが崩れにくい、優れた指向性の証左だ。低域は実測で25Hzまで容易に伸びており、まさに真のフルレンジ性能を誇示している 14。
インピーダンスとアンプへの要求:見かけによらず穏当な負荷
インピーダンスカーブは、このスピーカーがアンプにとって比較的「良心的な」負荷であることを示している。公称4Ω、最低3Ωというスペック通り、極端に低い値まで落ち込むことはなく、位相角の変動も穏やかな範囲に収まっている。高域にいくつかの共振点が見られるものの、レビュアーは「このカテゴリーのエレクトロニクスにとっては心配ない」と結論付けている 14。 これは重要なポイントだ。以前のモデルでは、より厳しい負荷特性が報告されていたが、Sonja 2.3iは、その巨大な体躯と高性能ドライバーにもかかわらず、適切に設計されたハイエンドアンプであれば問題なく駆動できることを示唆している。
歪率と過渡応答:クリーン&ファストの証明
提供されたHi-Fi Voice誌の測定データは、Sonja 2.3iの歪率と時間領域における挙動を白日の下に晒し、その技術的優位性を裏付けている 14。
歪率:
全高調波歪(THD)のグラフ(画像1)を見ると、約90dBというかなりの音圧レベルでの測定にもかかわらず、歪み成分は中域から高域にかけて信号レベルより平均して40dB以上低く抑えられていることがわかる。これは歪率に換算すると1%を大きく下回り、多くの帯域で0.3%〜0.5%という極めて優秀な数値だ。これは、Stereophile誌がSonja 1.1モジュールで測定した-66dB (0.05%)という驚異的な低歪率と軌を一にするものであり、BilletCoreドライバーとアルミ筐体がいかに歪みの発生を抑制しているかの客観的な証拠である 4。
さらに高調波成分を分析したグラフ(画像2)では、低域において音楽的に悪影響が少ないとされる偶数次の2次高調波(黄色線)が、奇数次の3次高調波(オレンジ線)よりわずかに優勢であり、中高域では両者とも極めて低いレベルに抑制されている。これにより、大音量でも音が飽和したり、耳障りになったりすることなく、純粋な音楽信号だけが耳に届く。
過渡応答:
スピーカーの「速さ」や「切れ味」を客観的に示すのが過渡応答特性だ。ウォーターフォール(CSD)プロット(画像3)は、信号が停止した後に音がどれだけ速く減衰するかを示しているが、Sonja 2.3iのグラフは模範的だ。特に中高域において、共振によるエネルギーの残留(尾引き)がほとんど見られず、音がスパッと消えている。これは、ドライバーの分割振動やエンクロージャーの共振が極限まで抑えられていることを意味し、Stereophile誌がSonja 1.3のエンクロージャーで共振の少なさを指摘したこととも一致する 4。
インパルス応答(画像4)は、鋭い単一のパルスに対するスピーカーの反応を示す。グラフは、非常にシャープな立ち上がりと、その後のリンギング(付帯音)の素早い収束を示しており、優れた過渡応答性能を物語っている。さらに、その時間積分であるステップ応答(画像5)を見ると、ツイーターの素早い立ち上がりに続き、ミッドレンジが滑らかに追従している様子がわかる。これは、DualCoherentクロスオーバーが、各ドライバーの時間軸を正確に揃えるという設計目標を達成していることの証左であり、聴感上のピンポイントな音像定位と揺るぎないサウンドステージの源泉となっている。
4. 耳が捉えた真実 — リスニング・インプレッション
技術とデータが、実際の聴感としてどのように結実するのか。世界中のレビューから引用し、その音の輪郭を浮かび上がらせよう。
| レビュアー / 媒体 | 引用抜粋 (和訳+原文) |
|---|---|
| Audiodrom | 「その表現力の強さは、プログラム素材を私たちの耳に送り届ける、純粋で非対立的な中立性にある」 (“the power of their expression is in the sheer non-confrontational neutrality with which they send program material…to our ears”) |
| Hi-Fi Voice | 「ボーカルが始まると、彼らはただ消え去り、音楽の中にその痕跡は全くない」 (“when the vocals come on, they just disappear, there is no trace of them in the music.”) |
| The Absolute Sound (on Sonja 2.2) | 「それは音楽に仕えるスピーカーであり、どんな種類のものであろうと関係ない。大きな成果だ」 (“The Sonja 2.2 is a speaker that serves the music, no matter what kind. A major achievement.”) |
| AudioShark Forum user “Alpinist” | 「私は2.2iを好む…凝集性と親密さを提供する」 (“I just prefer the 2.2i…They deliver cohesiveness and intimacy.”) |
ジャンル別・聴感の統合分析
- 無色透明という個性:
レビューで共通して語られるのは、その圧倒的な透明性だ。スピーカーが「消える」 14 という表現が何度も使われるように、Sonja 2.3iは音源とリスナーの間に介在する最後のヴェールを剥ぎ取る。これは、前述の低歪率ドライバーと無共振エンクロージャーがもたらす直接的な結果である。 - 音色の純度 (ジャズ / アコースティック):
多くのレビューで絶賛されるアコースティック・ベースの再生能力 11 は、このスピーカーの特性を象徴している。人工的な暖かみや膨らみを一切加えず、弦が指を離れる瞬間、木の胴が鳴る質感、楽器を取り巻く空気の振動までをもリアルに描き出す。これは、BilletCoreドライバーの優れた過渡応答特性と、エンクロージャーの色付けのなさがもたらすものだ。 - スケールと凝集性 (クラシック / オーケストラ):
DualCoherent 2クロスオーバーが実現する正確な位相特性は、広大で安定した、そして深く層を成したサウンドステージを描き出す。複雑なオーケストラのパッセージでも、各楽器の分離は明瞭でありながら、全体としての一体感が失われることはない 34。ただし、フォーラムでは、より大型の2.3iが、弟分の2.2iが持つ「親密さ」を維持できているか、という議論も見られる 16。これは、スケール感と点音源的な凝集性との間に、ある種のトレードオフが存在することを示唆しているのかもしれない。 - ダイナミクスと制動力 (ロック / EDM):
BilletCoreドライバーの剛性は、強烈なダイナミクスの起伏にも全く動じない。密閉型設計と強力なアンプによる駆動を前提とした低域は、量感で圧倒するタイプではなく、どこまでも正確でアーティキュレーションに優れる 11。それはブーミーさとは無縁の、引き締まってコントロールされたベースだ。
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5. 価値の天秤 — 総合評価
これらの分析を踏まえ、5つの評価軸でSonja 2.3iの価値を採点する。
| 評価軸 | 採点 (5点満点) | 解説 |
|---|---|---|
| 技術性能 (Technical Performance) | ★★★★★ | YGの技術は、測定可能な性能を最大化するという一点において、業界の頂点に立つ。BilletCore、DualCoherent 2、そして航空宇宙グレードのアルミ筐体は、歪みと共振を根絶するための論理的な帰結であり、その実行レベルは非の打ち所がない 18。 |
| 音楽的魅力 (Musical Charm) | ★★★★☆ | これは評価が分かれる点だ。絶対的な忠実性と透明性は、優れた録音を比類なきレベルで再現する。しかし、その「脚色のなさ」は、一部のリスナーには「冷たい」「魂がない」と映るかもしれない 36。音楽を美化するのではなく、解剖する。その姿勢を愛せるかどうかが鍵となる。 |
| ビルドクオリティ (Build Quality) | ★★★★★ | 完璧。ミクロン単位の精度で削り出されたアルミニウムの塊は、もはや工業製品ではなく芸術品。その重量と剛性は、音質への貢献という機能的価値と、所有する喜びという感情的価値の両方を満たす 20。 |
| 価格対価値 (Price-to-Value) | ★★★☆☆ | 2,600万円という価格は絶対的に高価だ。しかし、この価格には、独自の製造設備への投資、膨大な開発時間、そして妥協なき素材コストが含まれている 38。モジュール式でアップグレード可能な点は長期的な価値を担保するが 19、収穫逓減の法則は無視できない。これはコストパフォーマンスではなく、パフォーマンス・アット・エニー・コストの産物だ。 |
| 将来性 / 修理性 (Future-Proofing) | ★★★★☆ | YGは旧モデルのアップグレードパスを提供してきた実績がある 6。Sonja 2.3から2.3iへのアップデートがその好例。この姿勢は、高額な初期投資を保護する上で極めて重要。メーカーが存続する限り、陳腐化のリスクは低いと言える。 |
6. ハイエンドの羅針盤 — 存在意義の分析
Sonja 2.3iは、ハイエンドオーディオ市場において、どのような立ち位置を占めるのだろうか。それは、一つの明確なドクトリンを体現する存在だ。
「YGドクトリン」:技術的正確性こそが音楽性の源泉である
Sonja 2.3iは、ある仮説を証明するために存在する。「最も音楽的に満足度の高いスピーカーとは、最も技術的に正確なスピーカーである」という仮説だ。心地よい響きや、メーカー固有の「ハウスサウンド」といった概念を、YGは根本的に否定する。彼らにとってのハウスサウンドとは、「サウンドを持たないこと」そのものなのだ。これにより、YGはロマンティシズムが渦巻くハイエンド市場において、孤高のピュアリストとしての地位を確立している。
また、Sonjaラインのモジュール構造(2.1i → 2.2i → 2.3i)は、単なる販売戦略ではない。それは彼らの設計思想の物理的な現れだ。リスナーは、部屋のサイズや好みに応じて、低域の量感やダイナミックヘッドルームを拡張できる。しかし、その核となるMTMモジュールの音響特性は不変だ。これは、部屋のサイズごとに異なるモデルを用意する多くの競合とは一線を画す。YGが提供するのは、スケールアップ可能な、ただ一つのコア・サウンドなのである。
音質の長所と短所
最後に、主要な競合モデルとの音質的な特徴を比較し、Sonja 2.3iの立ち位置を明確にしよう。
- YG Acoustics Sonja 2.3i:
- 長所: 比類なき透明性、スピード、そして凝集性。マイクロダイナミクスの解像度はワールドクラス。音像定位はピンポイントで揺るぎない。どこまでもニュートラルな音色。
- 短所: 組み合わせる機器やソースによっては、分析的に過ぎると感じられることがある。録音の粗を容赦なく暴き出す。低域は極めて明瞭だが、バスレフ型のような官能的な「量感」には乏しい。
- vs. Wilson Audio Alexx V:
- 長所: 圧倒的なダイナミックインパクトと「ライブ」なエネルギー感。より感情に訴えかける、エキサイティングなプレゼンテーション。
- 短所: ニュートラルさでは一歩譲り、明確な「ハウスサウンド」を持つ。一部のリスナーからは、各ドライバーが分離して聴こえるとの指摘もある。
- vs. Magico M3:
- 長所: YG同様、高度なニュートラルさと透明性を追求するが、アプローチは最新の素材科学に重きを置く。滑らかで解像度の高い高域が魅力。
- 短所: 一部のリスナーには「ドライ」で、音楽の潤いが不足していると感じられることがある。音は正確無比だが、YGのスピード感やWilsonの躍動感とは異なる、静的な美しさを持つ。
- vs. Rockport Technologies Lyra:
- 長所: 技術的正確性と音楽的な豊かさの、絶妙なバランスを実現。パワフルでありながら解像度の高い低域と、権威ある中域に定評がある。
- 短所: その洗練されたバランスゆえに、YGのような分析的な透明性や、Wilsonのような爆発的なダイナミクスを求める極端なピュアリストには、物足りなく映るかもしれない。
引用: 39
7. 結論 & 推奨ユーザー
おすすめしたい人 / やめた方が良い人
- おすすめしたい人:
- 美しさよりも真実を尊ぶ、分析的なリスナー。
- 強力なソリッドステートアンプを所有し、その性能をありのままに映し出す鏡を求める者。
- オーディオシステムを、録音芸術の深淵を探るためのツールと考える探求者。
- そのスケールを受け止められる、広く、音響的に整った部屋を持つ幸運な人。
- やめた方が良い人:
- 暖かく、ロマンティックで、欠点を優しく包み込むような音を好むリスナー。
- 小出力の真空管アンプのオーナー。
- 短時間の試聴で、すぐさま感動的な体験を求める人。
- 音楽ライブラリの大半が、お世辞にも高音質とは言えない録音で占められている人。
将来の更新・Mod 可能性
YGの歴史を鑑みれば、将来的にクロスオーバーやドライバー技術に革新があった場合、アップグレードパスが提供される可能性は高い 6。これは高額な初期投資の価値を長期的に維持する上で、極めて重要な要素だ。
総合評価(★×5)
★★★★☆ (4.5)
総評
Sonja 2.3iは、音楽に何も足さず、何も引かない、純粋な真実の探求者だ。その音は、録音という名の法廷で下される、最も厳格で公正な判決である。
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引用文献
- YG Acoustics - Doug Brady HiFi, https://dougbradyhifi.com/collections/yg-acoustics
- YG Acoustics - All about the music, https://www.yg-acoustics.com/
- About Us - YG Acoustics, https://www.yg-acoustics.com/about-us/
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