日本のヘッドホンメーカーFinalは2025年11月14日、東京と英国において、DXシリーズ初となるクローズドバック・ヘッドホン「DX3000CL」を発表した。開放型のDX6000に続く新モデルで、同社のハイエンド音響哲学をダイナミック・ドライバープラットフォームで展開するシリーズの新たな方向性を示すものとなっている。
DXシリーズの系譜とクローズドバック化の意義
FinalのDXシリーズは、同社のハイエンド音響設計思想をダイナミック・ドライバー方式で実現するために創設された。開放型のDX6000では、マグネシウム振動板による革新的な設計が話題となったが、DX3000CLはそのコンセプトを密閉型に拡張した初のモデルだ。
Finalによれば、DXシリーズは「ブランドのハイエンド音響哲学を、より身近で可搬性の高い形で提供する」ことを目的としている。DX3000CLは、開放型特有の音場の広がりと音色の繊細さを保ちながら、遮音性を確保することで、ホーム、スタジオ、ポータブル用途の全てに対応する汎用性を実現している。
紙-カーボン複合ドライバーと音響設計
DX3000CLの心臓部は、40mm径の紙-カーボン複合ダイナミックドライバーだ。Finalはこの素材の組み合わせについて、「スピードと質感を両立しながら、硬質材料特有の硬さを回避する」ことを目的としたと説明している。
フリーエッジ・サラウンド構造により不要な共振を抑制し、振動板がよりリニアに動作することで、「自然で楽なサウンド再生」を実現している。筐体、ダンピング機構、触感仕上げはすべてFinalの日本エンジニアリングチームによって設計されており、より手頃な価格帯のモデルでありながら、同社の職人的な設計品質が維持されている。
長時間リスニングへの配慮
快適性も重視されている。軽量シャーシ、柔らかいパッド付きイヤーパッド、慎重に制御されたヘッドバンド圧により、長時間のリスニングセッションでも疲労を最小限に抑える設計だ。
クローズドバック構造にもかかわらず、Finalは「開放感を維持しながら実用的な遮音性を提供する」としている。これは、DX6000の開放型では対応しきれなかった使用環境において、同社のサウンド哲学を体験できることを意味する。
Finalのチューニング哲学
Finalは一貫して、誇張されたピークや人工的なディテールを避けるチューニング哲学を掲げている。同社は「ドライバーが筐体内でどのように自然に振る舞うか」「録音の意図をどれだけ忠実に伝えられるか」に焦点を当てており、紙-カーボン複合振動板の組成、内部チャンバーの形状、全体的な音響スキームはすべて、「臨床的な精度ではなく、音楽の感情的な信憑性」を提供するための広範なテストの結果だという。
価格と発売時期
DX3000CLの価格は£579.99 | €599.99 | US\$599.99に設定されており、現在、選定された販売店を通じて発売中だ。