オーディオの世界には時折、常識という名の重力圏を振り切って、ただひたすらに理想を追求したかのような製品が登場する。それは時に奇抜な外見をまとい、我々の固定観念に揺さぶりをかける。VIVID AudioのGIYA G1 Spiritは、間違いなくその後者だ。まるで異星のオブジェか、深海の生物を思わせるその有機的なフォルムは、リビングルームに置くには相当な覚悟を要するだろう。だが、もしあなたがその見た目の裏に隠された、音響物理学への深い洞察と音楽への純粋な愛情を理解したなら、このスピーカーがなぜこの形でなければならなかったのか、そしてなぜ他のスピーカーがこの形をしていないのか、という根源的な問いに行き着くはずだ。
このスピーカーの設計者、ローレンス・ディッキー。その名を聞いてピンと来たなら、あなたは相当なオーディオ通だ。そう、彼はあのB&Wの伝説的アイコン、Nautilusを生み出した張本人である 1。Nautilusで提示された「キャビネットの共振と回折を消滅させる」という革命的な思想は、VIVID Audioという新たな舞台でさらに純化され、GIYA G1 Spiritとして結実した。
本稿では、この1,000万円を超える音響彫刻が、単なる高価な調度品なのか、それとも音楽再生の新たな地平を切り拓く真のイノベーションなのかを、データと“耳”の両輪で徹底的に解剖していく。競合ひしめくハイエンドの頂で、この「魂(Spirit)」は、いかなる響きを奏でるのだろうか。
VIVID Audio GIYA G1 Spirit — Overview
関連記事

B&W Nautilus レビュー:30年の時を超えた音響彫刻の伝説と現実
Bowers & Wilkins Nautilusの30年にわたる進化と現代における立ち位置を、技術的特徴、測定データ、歴史的視点から徹底検証。音響彫刻としての価値と現代のハイエンドスピーカーとの比較分析。

Alsyvox Botticelli レビュー:平面駆動が奏でる音響的ルネサンス
スペイン発、イタリアの航空宇宙工学者が設計したリボン型スピーカーAlsyvox Botticelli。平面駆動の歴史的課題を克服し、比類なき透明性とダイナミクスを両立したと評される本機の技術、音響性能、そして市場における存在意義を徹底的に分析・評価。

Bowers & Wilkins 801 D4 レビュー:究極の透明性を誇るリファレンス・スピーカー
B&W 801 D4の徹底レビュー。ダイヤモンド・トゥイーター、バイオミメティック・サスペンション、エアロフォイル・コーンを搭載したフラッグシップ3ウェイスピーカーの技術解析と音質評価。

Focal Grande Utopia EM Evo レビュー:音響の巨神、その心臓部に迫る
Focalのフラッグシップスピーカー Grande Utopia EM Evo の徹底レビュー。EMウーファー、ベリリウムツイーター、TMDサスペンションなど最先端技術を解剖し、測定データと聴感評価から音響性能を多角的に分析。30万ドルの価値とハイエンド市場での立ち位置を検証する。
- メーカー / 型番: VIVID Audio / GIYA G1 Spirit
- 本国発売: 2017年2月 (シカゴで発表) 3
- 日本国内価格 (税込):
- スタンダードカラー: 13,200,000円 (ペア)
- アップグレードカラー: 13,860,000円 (ペア) 5
- 主要市場価格:
- 主要スペック:
- 形式: 4ウェイ 5ドライバー、テーパードチューブ・エンハンスト・バスレフ型
- 周波数特性: 29 – 33,000 Hz (±2 dB)
- 周波数レンジ: 25 – 36,000 Hz (-6 dB)
- 公称インピーダンス: 6 Ω (最低 3 Ω @ 20kHz)
- 感度 (公称): 92 dB @ 2.83 VRMS / 1 m
- 高調波歪率: < 0.3% (第2・第3高調波)
- クロスオーバー周波数: 220 Hz, 880 Hz, 3,500 Hz
- 許容入力: 1,600 W (RMS)
- 寸法 (H×W×D): 1,600 × 440 × 820 mm
- 重量: 67.4 kg (内蔵クロスオーバー) / 62 kg (外部クロスオーバー) 10
- 出典: https://vividaudio.com/giya/giya-g1-spirit/
1. 世界の耳は「魂」をどう聴いたか
GIYA G1 Spiritがオーディオ界に投じられた時、世界の目利きたちはどう反応したのか。ここでは主要なレビューを俯瞰し、その評価の核心に迫る。ただし、我々は単なる賞賛の言葉を鵜呑みにはしない。レビューには常にバイアスがつきまとう。メーカーから提供されたピカピカの個体を、理想的な環境で鳴らす専門誌のレビューは、どうしてもポジティブな側面が強調されがちだ。一方で、フォーラムに投稿するエンドユーザーの声は率直だが、その評価は個々の環境に大きく左右される。これらの背景を念頭に置き、評価の重みを冷静に判断する必要がある。
メディア | 引用抜粋 (和訳+原文) | 評価点 | バイアス評価 |
---|---|---|---|
Stereophile (Jon Iverson) | 「Giya G1 Spiritはロックでき、しばしば私を完全に没頭させた… 偉大な録音であれば、リアルな音量に近づけるほど、すべてが良く聴こえた。」 “Vivid’s Giya G1 Spirits could rock, and often inspired me to dive all in… And with a great recording, the closer to realistic levels I pushed them, the better everything sounded.” | ★★★★★ | 中程度: 典型的なハイエンド誌のレビュー。ポジティブな側面が強調されるが、測定データによる裏付けがあり信頼性は高い。 |
The Absolute Sound (Greg Weaver) | 「非常に透明で、優れた解像能力を持ち、音楽的に重要なディテールと、ほとんど豊潤なトーン、信頼できる質感、ダイナミックでリズミカルな一貫性を融合させている。」 “Highly transparent, with excellent resolving abilities, they blend musically relevant detail with almost lush tone, credible texture, and dynamic and rhythmic coherence.” | ★★★★★ | 中程度: Stereophileと同様の傾向。貸与機でのレビューであり、製品の長所を最大限に引き出す構成で試聴されている可能性が高い。 |
SoundStage! Ultra (Jeff Fritz) | 「Vivid Audio G1 Spiritスピーカーは、まさに壮大な透明性を実現できると、私は完全に確信している。」 “My obvious conclusion is that the Vivid Audio G1 Spirit loudspeakers are capable of simply magnificent transparency. I’m completely convinced.” | ★★★★★ | 低〜中程度: レビュアーの私物リファレンス機としての評価。長期使用に基づき、特定の側面(透明性)に焦点を当てているが、その分、客観的な全体評価とは少し異なる可能性がある。 |
Hi-Fi News (David Price) | 「象徴的なB&W Nautilusほど奇抜には見えないかもしれないが、これはそのより若く、そして間違いなく優れた子孫である。」 “It may not look as outrageous as the iconic B&W Nautilus, but this is its younger, and arguably superior offspring.” | ★★★★★ | 中程度: 英国誌特有の音楽性を重視したレビュー。測定(Keith Howard担当)と試聴が分かれており、バランスは取れている。 |
AudioScienceReview Forum (User “spacevector”) | 「Spiritに乗り換えたらもう後戻りはできない… 音楽をシステムから切り離し、スピーカーからではなく、どこかエーテルの中から聴こえてくる。」 “once you go Spirits there is no going back… they detach the music from the system , it does NOT come from speakers , it comes from somewhere in the ether.” | ★★★★★ | 低程度 (個人バイアス): G1からのアップグレードユーザーであり、強い肯定バイアス(確証バイアス)が見られる。しかし、その変化点の描写は非常に具体的で参考になる。 |
AudioShark Forum (User “the professor”) | 「ラテン(サルサ)音楽は素晴らしいパワーとディテールで提示された。オーケストラのプレゼンテーションは大きかった。印象的だ!」 “The salsa music was presented with great power and detail. The orchestra presentation was big. Impressive!” | ★★★★☆ | 低程度 (個人バイアス): ショップでの短時間試聴に基づく第一印象。ブレークイン途中の状態での評価であり、ポテンシャルを完全には引き出せていない可能性がある。 |
集計と分析
調査した10ソース中、実に9ソースが極めて肯定的、残る1ソースも条件付きで肯定的と、賞賛の嵐だ。否定的な意見は事実上皆無と言っていい。共通して評価されているのは「透明性 (transparency)」「低歪み」「広大なダイナミックレンジ」、そしてスピーカーの存在が消える「disappearing act」である 12。これは、設計目標が高次元で達成されていることの何よりの証拠だろう。
しかし、興味深いのはここからだ。多くのレビュアーが口を揃えて「ニュートラル」と評する一方で、「ロックが楽しい」12、「豊潤な(lush)トーン」13、「少し甘美(a bit of milk and sugar)」12 といった、わずかにキャラクターを感じさせる表現を併用している点だ。これは一体何を意味するのか。
おそらく、G1 Spiritが持つ「中立性」は、無味無臭のモニターサウンドとは一線を画すものなのだろう。測定データを見ると、軸上では極めてフラットだが、高域の指向性がやや強いため、リスニングポイントから少し外れると滑らかにロールオフする特性を持つ 18。また、深く伸びた低域は部屋の音響モードによっては豊かに響く傾向がある 18。この「軸上では極めて明瞭、オフアクシスでは滑らか」「深くタイトでありながら、豊かな量感も併せ持つ低域」という絶妙なバランスが、聴き手に「物理的に正確でありながら、音楽的な楽しさを決して損なわない」という印象を与えているのではないか。G1 Spiritのハウスサウンドとは、冷徹な物理法則の上に築かれた、極めて人間的な音楽愛の現れなのかもしれない。
2. 形態は機能に従う——ノーチラスから受け継がれし音響哲学
GIYA G1 Spiritの、一度見たら忘れられないその姿。これは単なるデザイナーの気まぐれではない。その全ての曲線、全ての膨らみには、音響物理学に基づいた明確な理由が存在する。その根源にあるのは、設計者ローレンス・ディッキーがB&W Nautilusで確立し、生涯をかけて追求し続ける音響哲学、「形態は機能に従う(Form Follows Function)」だ。
ディッキーの思想の核心は、スピーカーを音楽再生の足枷にしている二大元凶——キャビネットの「共振」と音波の「回折」——をいかにして消滅させるか、という点に集約される 19。彼はスピーカーを「演奏への窓」と捉え、その窓を限りなく透明にすることを目指す 19。G1 Spiritの異形は、その哲学を一切の妥協なく追求した結果なのである。その魂を宿す、主要な技術群を見ていこう。
魂を宿す技術的特徴
- テーパード・チューブ・ローディング (Tapered Tube Loading): Nautilusの最も象徴的な技術であり、VIVID Audioの根幹を成すものだ。ツイーターからウーファーに至るまで、全てのドライバーの背後には、指数関数的に先細りになる長い吸音管が接続されている 9。ドライバーの背面に放出された音(背圧)は、この管の中を進むうちにエネルギーを失い、管の終端に達する頃にはほぼ消滅する。これにより、背圧が管内で反射して振動板に悪影響を与えるのを防ぎ、極めてクリーンで着色のない音を実現する 13。G1 Spiritの頭頂部でとぐろを巻く巨大な「巻き貝」は、他ならぬウーファー用の長大なテーパード・チューブなのである 21。

- リアクション・キャンセリング・ウーファー (Reaction Cancelling Woofer): 物理学の授業を思い出してほしい。作用・反作用の法則(ニュートンの第三法則)だ。スピーカーのウーファーが前方に動く時、その反作用でキャビネットは後方に押される。この微細な振動が、音を濁らせる元凶となる。G1 Spiritは、2基の225mmウーファー (C225-100) をキャビネットの側面に背中合わせに配置し、内部で機械的に固く連結 13。これにより、一方のウーファーの反作用をもう一方が完全に相殺し、キャビネットに伝わる振動を劇的に低減する 9。この革新的なアイデアのおかげで、G1 Spiritは重厚長大なエンクロージャーに頼ることなく、驚くほどクリアでパワフルな低音を再生できるのだ。

- カテナリー・ドーム (Catenary Dome): スピーカーの理想は、振動板が歪むことなく全体として均一に動く「ピストンモーション」だ。しかし、周波数が高くなると振動板は分割振動(ブレークアップ)を起こし、歪みの原因となる。VIVID Audioは、ツイーター (D26) とミッドレンジ (D50) のドーム形状に、一般的な半球形ではなく、カテナリー(懸垂線)形状を採用 15。これは、吊り下げた鎖が自重で描く自然な曲線のことだ。有限要素法解析を駆使して最適化されたこの形状は、ドームの剛性を飛躍的に高め、ブレークアップ周波数を可聴帯域のはるか上空へと追いやる。例えばD50ミッドレンジでは、カーボンファイバー製の補強リングとの相乗効果で、最初のブレークアップ周波数を一般的なドームの約2倍となる22kHzまで引き上げることに成功している 1。これにより、金属振動板特有の硬さや付帯音とは無縁の、ピュアな中高域が生まれる。

- 先進的複合材エンクロージャー (Advanced Composite Enclosure): G1 Spiritの滑らかなボディは、ガラス繊維強化プラスチック (GRP) とバルサ材をコアにしたサンドイッチ複合材を、真空注入成形という高度な手法で製造されている 9。多くのメーカーが重い素材で振動を「抑え込む」のに対し、VIVID Audioは「軽量かつ高剛性」な素材で共振周波数を可聴帯域外へ「追いやる」というアプローチをとる 21。そして、キャビネットに一切の平面と鋭角を持たないデザインは、音波がエッジで反射・回折する現象を防ぎ、スピーカーの存在を感じさせない広大な音場再現に大きく貢献している 22。
ライバルとのスペック比較表
G1 Spiritが市場でどのような立ち位置にあるのか、同価格帯のライバルたちと比較してみよう。注目すべきは、単なる数値の優劣ではない。エンクロージャー素材やドライバー素材、そして重量を見れば、各社がどのような哲学で音作りに臨んでいるかが透けて見える。
スペック | VIVID Audio GIYA G1 Spirit | Wilson Audio Alexia V | Magico M2 | Focal Maestro Utopia EVO |
---|---|---|---|---|
形式 | 4ウェイ 5ドライバー バスレフ | 3ウェイ 4ドライバー バスレフ | 3ウェイ 4ドライバー 密閉型 | 3ウェイ 3ドライバー バスレフ |
ドライバー | HF: 26mm アルミ合金 MID: 50mm アルミ合金 L-MID: 125mm アルミ/カーボン LF: 2x 225mm アルミ合金 | HF: 25.4mm シルク MID: 178mm パルプ/カーボン LF: 203mm & 254mm パルプ | HF: 28mm ベリリウム/ダイヤ MID: 152mm グラフェン LF: 2x 178mm グラフェン | HF: 27mm ベリリウム MID: 165mm ‘W’サンドイッチ LF: 2x 270mm ‘W’サンドイッチ |
周波数特性 | 29 - 33,000 Hz (±2dB) | 19 - 33,000 Hz (±3dB) | 26 - 50,000 Hz (±3dB) | 25 - 40,000 Hz (±3dB) |
感度 | 92 dB (公称) | 90 dB | 88 dB | 93 dB |
インピーダンス | 6 Ω (公称), 3 Ω (最低) | 4 Ω (公称), 2.59 Ω (最低) | 4 Ω | 8 Ω (公称), 3.1 Ω (最低) |
エンクロージャー | ガラス繊維強化バルサコア複合材 | X-Material / V-Material | カーボンファイバー / アルミニウム | 高密度MDF |
寸法 (HWD, mm) | 1600 x 440 x 820 | 1347 x 356 x 593 | 1143 x 495 x 483 | 1470 x 455 x 770 |
重量 (kg/本) | 67.4 | 117.93 | 75 | 116 |
価格 (USD/ペア) | ~$105,550 | ~$67,500 | ~$76,600 | ~$80,000 |
出典 | 9 | 23 | 24 | 26 |
この表が雄弁に物語っているのは、G1 Spiritの特異性だ。特に注目すべきは重量。競合機が100kgを超える巨体で振動を封じ込めようとする中、G1 Spiritは67.4kgと際立って軽量だ。これは、リアクション・キャンセリング技術がいかに効果的であるか、そして設計思想そのものが根本的に異なることの証左に他ならない。VIVID Audioは、物理法則を味方につけることで、重さという呪縛から解き放たれようとしているのだ。
3. メスで切り拓く音の真実——測定データが暴くG1 Spiritの素顔
オーディオ評論における詩的な表現も、客観的な測定データという名のメスの前ではその真価を問われる。ここでは、Stereophile誌やHi-Fi News誌といった信頼性の高い第三者機関による測定結果を紐解き、G1 Spiritの音響的性能を冷静に分析する。
- 周波数特性と指向性:
リスニングポイントの軸上で測定された周波数特性は、中域から中高域にかけて驚くほど平坦だ。これは、スピーカー固有の音の癖、いわゆる「着色」が極めて少ないことを科学的に示している 18。5kHzあたりから高域に向かって緩やかにレベルが下がる傾向が見られるが、これはツイーターの指向性が強まることに起因するもので、部屋の中での直接音と反射音のバランスを考慮した、巧みなチューニングの結果と推測される 18。実際、水平・垂直方向ともに音の拡散性は良好で、リスニングポイントを多少移動しても音質変化が少ない、広いスイートスポットを実現している 12。 - インピーダンスと感度:
ここで、カタログスペックを鵜呑みにすることの危険性を示す、興味深い事実が浮かび上がる。メーカーが公称する感度は92dBと、非常に高効率なスピーカーであることを示唆している。しかし、Stereophile誌の実測では約90dB 18、Hi-Fi News誌に至っては86.9dB (IEC規格) 28 と、スペックシートの数値とはかなりの乖離があるのだ。
この「感度のパラドックス」はなぜ生じるのか。測定方法の違いも一因だが、5dBもの差はそれだけでは説明がつかない。答えはインピーダンスカーブにある。G1 Spiritのインピーダンスは、低域で5Ω前後と安定しており、高域では15Ωまで上昇する 18。これはアンプにとって非常に駆動しやすい負荷特性だ。つまりVIVID Audioは、感度を無理に稼ぐためにインピーダンスを危険なレベルまで下げるという安易な手法を採っていないのである 28。公称の92dBという数値は、おそらく特定の条件下でのピーク値に近いものであり、実測値こそが、より現実的な性能を示していると考えるべきだ。これは、G1 Spiritを真に歌わせるためには、スペック上のワット数よりも、スピーカーをしっかりとグリップできる電流供給能力、すなわち「駆動力」の高いアンプが不可欠であることを示唆している。
- 歪率と共振:
G1 Spiritの真骨頂は、その歪みの少なさにある。高調波歪率は全帯域にわたって驚異的に低く、特に10kHzでは0.1%という、測定誤差を疑うほどの数値を記録している 28。これは、カテナリー・ドームをはじめとする数々の低歪み技術が完璧に機能している証拠だ。エンクロージャーの共振に至っては、Stereophile誌が聴診器を使ってようやく微細なモードを検知したレベルで、実質的に「死んでいる (dead)」と評価されている 18。また、音の立ち上がりと消え際の速さを示す累積スペクトラル減衰 (CSD) プロットも「印象的なほどクリーン」であり、音の濁りや余計な響きが極めて少ない、見通しの良いサウンドであることがデータからも裏付けられている 18。
4. 音楽が解き放たれる瞬間——魂を揺さぶるリスニング体験
測定データがスピーカーの身体能力を物語るとすれば、その魂のありかを教えてくれるのは、やはり音楽そのものだ。ここでは、世界中のレビュアーが体験した感動の瞬間を引用しつつ、G1 Spiritが様々な音楽ジャンルをどのように描き出すのか、その官能的な側面に迫ってみたい。
引用レビュー抜粋
レビュアー / 媒体 | 引用抜粋 (和訳+原文) |
---|---|
Jon Iverson / Stereophile | 「チェルシー・ウィリアムズのよく録音された声は、中央に固定され、素晴らしく描写された。」 “Williams’s well-recorded voice was locked in place, front and center, wonderfully rendered.” |
Jeff Fritz / SoundStage! Ultra | 「アデルの曲でピアノの全重量が落ちてくる瞬間に、クレルのアンプはG1 Spiritのウーファーを掴み、部屋の向こうに打ち出しそうだった。」 “On Adele’s ‘Go Easy on Me’… the Krells grabbed hold of the Vivid woofers and seemed ready to launch them across the room.” |
spacevector / AudioScienceReview Forum | 「低音は深く、信じられないほどの家を揺るがすレベルまで完全に歪みがない。タイトだが、聴こえるというよりは感じる低音だ。」 “The bass is profound , totally distortion free to ungodly house shaking levels , its tight , but its a bass that is not often heard but felt.” |
ジャンル別インプレッション
- クラシック (オーケストラ & 室内楽): G1 Spiritの最も得意とする領域だろう。スピーカーの存在が完全に消え去り、コンサートホールの空気感そのものが部屋に出現する。ティンパニの皮が震える重低音から、トライアングルの消え入るような倍音まで、オーケストラの全楽器が一切混濁することなく、あるべき場所に定位する。その解像度はまさに圧巻だ。弦楽器群は滑らかで、まるで液体のような質感で描かれる。ただし、一部のレビュアーからは、楽器間の音像の輪郭を厳密に描き分ける能力において、YG AcousticsのSonjaのような分析的なスピーカーに一歩譲る、という指摘もある 12。これは、G1 Spiritが個々の音の分離よりも、全体のハーモニーと音楽的な流れの美しさを優先するチューニングであることの現れかもしれない。
- ジャズ (ヴォーカル & トリオ): ヴォーカリストの息遣い、唇の湿り気まで感じさせるような生々しさは、特筆に値する。これは低歪みな中域ユニットの賜物だろう 12。ピアノのアタックは鋭く立ち上がり、ウッドベースの胴鳴りは豊かでありながら、その音階は驚くほど明瞭に聴き取れる。リアクション・キャンセリング・ウーファーがもたらす、ブーミーさとは無縁のタイトで深い低域が、スウィングするリズムセクションに躍動的な生命感を与えるのだ。
- ロック / EDM: 多くの超ハイエンドスピーカーが、その繊細さゆえに苦手とするジャンルだ。しかしG1 Spiritは、これを難なく、いや、むしろ水を得た魚のように鳴らしきる 12。1,600Wもの入力を受け止める強靭なウーファーは、大音量でも全く動じない。地を這うようなシンセベース、嵐のようなドラムソロを、歪みなく、正確に空間に叩きつける。特筆すべきは、音量を上げれば上げるほど、音が飽和するどころか、むしろ歪み感が減少し、音楽のエネルギーがよりダイレクトに体に突き刺さってくることだ。これは、まさに「ライブ会場の最前列」の体験に他ならない 29。
5. 価値という名の天秤——G1 Spiritの総合評価
10万ドル、日本円にして1,000万円を超えるスピーカーを前にして、単純な「コストパフォーマンス」という物差しは意味をなさない。我々が問うべきは、その絶対的な価格に見合うだけの、唯一無二の「価値」を提供してくれるかどうかだ。ここでは、複数の評価軸からG1 Spiritの価値を冷静に採点し、その本質を浮き彫りにする。
評価軸 | 採点 (5点満点) | 解説 |
---|---|---|
技術性能 | ★★★★★ | Nautilusから続く共振・回折排除の思想を、現代の技術でほぼ完璧に具現化。全ての技術が「透明性」という一つの目標に収斂しており、その完成度は比類ない。測定データもその優秀さを裏付けている。 |
音楽的魅力 | ★★★★★ | 技術の塊でありながら、出てくる音は驚くほど音楽的。分析的になりすぎず、音楽の躍動感や感情の機微を豊かに表現する。特に大音量時のダイナミクスと歪みのなさは、音楽に没入する快感を最大限に引き出す。 |
ビルドクオリティ | ★★★★☆ | 自動車グレードの塗装は美しく、複合材キャビネットの仕上げも素晴らしい。ただし、Magicoのような金属塊から削り出した製品と比較すると、機械的な剛性感や所有欲を満たす重厚感という点では一歩譲るかもしれない 30。 |
価格対価値 | ★★★★☆ | 絶対価格は極めて高い。しかし、同価格帯以上の競合機と比較して、独自の音響哲学と、それによってのみ得られる「完全にスピーカーが消える」体験を提供している点を考慮すると、その価値は十分にある。これは代替の効かない芸術品への投資に近い。 |
将来性 / 修理性 | ★★★★☆ | 外部クロスオーバーの採用により、将来的なアクティブ化への道が開かれている点は大きなメリット 13。ドライバーも自社設計・製造であり、長期的なサポートが期待できる。ただし、特殊な構造ゆえに修理は専門家でなければ困難だろう。 |
Bias Check (ポジティブ/ネガティブ要素の列挙)
いかなる製品も完璧ではない。G1 Spiritを正当に評価するため、その光と影を公平にリストアップする。
- ポジティブ:
- 他に類を見ないレベルの透明性と、部屋からスピーカーが消える広大なサウンドステージ。
- 全帯域にわたる驚異的な低歪み性能。
- 大音量でも全く破綻しない、圧倒的なダイナミック性能。
- クラシックからロックまで、あらゆるジャンルを高いレベルで再生するオールラウンド性。
- 音響物理学に基づいた、機能美を極めた唯一無二のデザイン。
- ネガティブ:
6. ハイエンドの頂に立つ孤高の芸術家——市場における存在意義
GIYA G1 Spiritは、単に高性能なスピーカーというカテゴリーには収まらない。それは、現代ハイエンドオーディオ市場における、一つの明確な「思想」の表明である。ここでは、主要な競合製品との比較を通じて、その孤高ともいえる立ち位置と、揺るぎない存在意義を分析する。
「軽量・高剛性」 vs 「高質量・高減衰」——思想の対決
現代のハイエンドスピーカー設計における最大のテーマの一つが、エンクロージャーの振動対策だ。この問題に対するアプローチは、大きく二つの流派に分かれる。
- VIVID Audioの「軽量・高剛性」思想: G1 Spiritはこの思想の急先鋒だ。その哲学は、振動エネルギーを質量で無理やり吸収(減衰)させるのではなく、そもそも振動を発生させない(リアクション・キャンセリング)、あるいは共振周波数を可聴域外に追いやる(複合材エンクロージャー)という、極めてクレバーなアプローチをとる 13。その結果として生まれたのが、このクラスでは異例の67.4kgという軽さだ。
- Magico / Wilson Audioの「高質量・高減衰」思想: これに対し、Magicoの航空宇宙グレードのアルミニウム削り出し筐体 24 や、Wilson Audioが独自開発したX/V-Material 23 は、「高質量・高減衰」思想の代表格である。巨大な質量と優れたダンピング(制振)特性を持つ素材で、エンクロージャーの振動を文字通り力ずくで抑え込む。その結果、製品重量は100kgを優に超え、時には200kgに迫るものも珍しくない。
この根本的な思想の違いは、当然ながら音にも現れる。G1 Spiritがもたらすのは、俊敏で開放的、ストレスから解放されたような鳴り方だ。音が空間にスッと生まれ、スッと消えていく。一方、質量系のスピーカーは、揺るぎない静寂の中から音が彫り出されるような、重厚で安定感に満ちた表現を得意とする。これは優劣の問題ではなく、音楽をどう表現したいかという美学の違いだ。G1 Spiritは、音楽の生命感、スピード、そしてダイナミクスを何よりも重視するリスナーにとって、他の何物にも代えがたい選択肢となるだろう。
ドライバー素材の哲学
ドライバーの振動板素材もまた、メーカーの哲学が色濃く反映される部分だ。G1 Spiritは、全てのユニットにアルミニウム合金系の振動板を採用している 9。これは、カテナリー・ドームやカーボンリング補強といった独自の技術によって、金属振動板の唯一の弱点ともいえる共振(いわゆる“メタル臭さ”)を完全に克服できるという、ディッキーの絶対的な自信の表れに他ならない 1。
対照的に、FocalやMagicoは高域に軽量・高剛性なベリリウム 24 を、Wilsonは自然な響きを持つシルクドーム 23 を採用するなど、素材固有の音色を巧みに活かした音作りを行う傾向がある。G1 Spiritのサウンドが多くのレビュアーから「無色透明」と評されるのは、この徹底した素材の「無個性化」へのこだわりが根底にあるからだと推測できる。
音質の直接対決——G1 Spiritはライバルとどう戦うか
では、実際の音質において、G1 Spiritはライバルたちとどのように渡り合うのか。レビューを横断的に分析すると、興味深いトレードオフの関係が見えてくる。
- vs. Magico (ダイナミクス vs. アーティキュレーション): G1 SpiritとMagicoの比較は、しばしば「音楽の解放感」と「究極の解像度」の対決として語られる。あるレビュアーは、Magico Q7 Mk.IIと比較して、G1 Spiritは「より大音量で、より自由に鳴る」と評し、ダイナミックレンジの頂点にある鋭いピークを丸めることなく、ありのままに描き出す能力でMagicoを凌駕すると述べている。特に95dBを超えるような大音量再生時の破綻のないダイナミズムは、G1 Spiritの独壇場だ。一方で、同じレビューは、音の微細なニュアンスを描き分ける「アーティキュレーション」においては、全帯域にわたってMagicoに軍配が上がるとも指摘する。Magicoが音源の隅々までを解き明かす「高解像度オーディオのための究極のスピーカー」であるのに対し、G1 Spiritはその点では「非常に良い」レベルに留まる、という評価だ 30。これは、Vividが音楽全体のエネルギーと躍動感を、Magicoが個々の音の精密な再現を優先するという、両者の美学の違いを象徴している。
- vs. Wilson Audio (低域の表現力): Wilson Audioのスピーカーは、そのパワフルな「スラム(衝撃)」を持つ低音で知られる。G1 Spiritの低音もまた、多くのレビューで「深く、タイトで、パワフル」と絶賛されているが、その質はWilsonとは少し異なるようだ 12。あるレビューでは、G1 Spiritの低音はWilsonのような「スラム」タイプではなく、むしろ音楽全体と共存し、豊かに響かせるタイプだと評されている 32。しかし別のレビューでは、G1 Spiritの「スラムとインパクト」は他の追随を許さないレベルだと賞賛されており、評価が分かれる点も興味深い 33。これはおそらく、部屋の音響特性や組み合わせるアンプによって、G1 Spiritの低域のキャラクターが変化しやすいことを示唆している。確かなのは、G1 Spiritの低音は、ドライバー間の統合性に難があると指摘されることもあるWilsonとは対照的に、極めてシームレスで歪みが少ないという点だ 33。
- vs. YGA / 分析的なスピーカー (音楽性 vs. 音像定位): Stereophile誌のレビューでは、YGA AcousticsのSonja 1.3と比較して、G1 Spiritは「音像の正確な定位や、サウンドステージの奥行きのレイヤー表現において、やや劣る」とされている 12。YGAがピンポイントで音像を描き出す「正確なホログラフィック・イメージング」を得意とするのに対し、G1 Spiritは個々の音の分離よりも、アンサンブル全体の「液体のような」滑らかさや音楽的な流れを重視する傾向があるようだ。しかし、こと「ロックを鳴らす能力」と大音量時のダイナミックなインパクトにおいては、G1 SpiritがYGAを圧倒するとも付け加えられている。
結局のところ、これらの比較は優劣を決めるものではなく、リスナーが何を最も重視するかという選択の問題に行き着く。音楽のエネルギーがほとばしるようなライブ感を求めるならG1 Spirit、録音の細部までを顕微鏡で覗き込むような体験をしたいならMagico、特定の種類のパワフルな低域を求めるならWilson、といった具合に、それぞれのスピーカーが異なる頂を目指しているのだ。
7. 結論:この音響彫刻は、誰の魂を震わせるのか
レビューの締めくくりとして、GIYA G1 Spiritの本質と、それが響くであろうリスナー像を明確にしたい。
このスピーカーの本質は、「音響物理学への深い洞察に基づき、スピーカーという存在そのものを消し去ることで、音楽の魂だけを空間に召喚する装置」である。
それは、録音されたパフォーマンスの核心に、何の色付けもなく触れたいと願う純粋な音楽愛好家、あるいは技術的探求の果てにある芸術性を理解するエンジニアの魂を最も強く震わせるだろう。
おすすめしたい人 / やめた方が良い人
- おすすめしたい人:
- スピーカーの存在を忘れ、音楽そのものに完全に没入したい人。
- ライブコンサートのような広大なダイナミックレンジとエネルギーを、自宅で体験したい人。
- 録音された音源の善し悪しをありのままに描き出す、モニターライクな透明性を求める人。
- 音響工学と工業デザインが完璧に融合した、機能的な「作品」を所有することに喜びを感じる人。
- やめた方が良い人:
- スピーカーに特定の「響きの美しさ」や「心地よい音の色付け」を求める人。
- 限られたスペースや、妥協した上流コンポーネントでシステムを組まざるを得ない人。
- 伝統的な木製キャビネットの、家具調のデザインを好む人。
- コストパフォーマンスという言葉が少しでも頭をよぎる人。
将来の更新・Mod可能性
G1 Spiritは、外部クロスオーバーネットワークを採用している。これは、将来的にチャンネルデバイダーを用いたマルチアンプ駆動(アクティブ化)への道が拓かれていることを意味する 13。さらなる音質向上を目指す探求心旺盛なユーザーにとって、この発展性は大きな魅力となるだろう。
総合評価: ★★★★★
最後に、この唯一無二のスピーカーに、敬意を込めてニックネームを贈りたい。
「音響的ステルス戦闘機」
引用文献
- Interview with Laurence Dickie – Founder of Vivid Audio and creator …, https://soundnews.net/interviews/interview-with-laurence-dickie-founder-of-vivid-audio-and-creator-of-the-iconic-bowers-wilkins-nautilus-speakers/
- Vivid Audio’s Laurence Dickie, Designer of the B&W Nautilus - SoundStage! Icons (June 2020) - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=J1dCaRhIAXY
- SoundStageGlobal.com - Vivid Audio Giya G1 Spirit - February 2017 - SoundStage! Global, https://www.soundstageglobal.com/index.php/product-debuts/vivid-audio-giya-g1-spirit-february-2017
- Vivid Giya G1 Spirit Debut Highlights - On a Higher Note, https://onahighernote.com/blog/2017/03/26/vivid-giya-g1-spirit-debut-highlights/
- ステラ、VIVID Audioのスピーカーについて5月1日受注分から価格を改定。「GIYA G1-S2」の販売も終了する - Stereo Sound ONLINE, https://online.stereosound.co.jp/_ct/17529018
- Vivid Audio Range - stella Inc, https://stella-inc.com/stellawebsite/vivid-audio-range/
- Vivid Audio GIYA G1 Spirit, https://www.nekoaudio.com/vividaudio-speaker.php?p=vividaudio-g1s
- Vivid Audio Giya G1 Spirit Floorstanders - Kronos AV, https://www.kronosav.com/products/vivid-audio-giya-g1-spirit-floorstanders
- GIYA G1 Spirit – Flagship High-End Speaker | Vivid Audio, https://vividaudio.com/giya/giya-g1-spirit/
- SPIRIT - VIVID Audio, https://vividaudio.com/wp-content/uploads/Vivid-Audio-GIYA-G1-Spirit-Info-Sheet-metric-units.pdf
- Vivid Audio GIYA G1 Spirit Floorstanding Speaker (Pair) - Ooberpad, https://www.ooberpad.com/products/vivid-audio-giya-g1-spirit-floorstanding-speaker-pair
- Vivid Audio Giya G1 Spirit loudspeaker Page 2 | Stereophile.com, https://www.stereophile.com/content/vivid-audio-giya-g1-spirit-loudspeaker-page-2
- Vivid Audio Giya G1 Spirit Loudspeaker - The Absolute Sound, https://www.theabsolutesound.com/articles/vivid-audio-giya-g1-spirit-loudspeaker/
- The Incredible Transparency of the Vivid Audio G1 Spirit …, https://www.soundstageultra.com/index.php/features-menu/opinion-menu/1110-the-incredible-transparency-of-the-vivid-audio-g1-spirit-loudspeakers
- Vivid Audio Giya G1 Spirit loudspeaker | Hi-Fi News, https://www.hifinews.com/content/vivid-audio-giya-g1-spirit-loudspeaker
- Vivid Audio Giya G1’s vs G1 Spirits | Audio Science Review (ASR) Forum, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/vivid-audio-giya-g1s-vs-g1-spirits.1733/
- Vivid G1 Spirits with External Crossovers | AudioShark Forums, https://www.audioshark.org/threads/vivid-g1-spirits-with-external-crossovers.19856/
- Vivid Audio Giya G1 Spirit loudspeaker Measurements | Stereophile …, https://www.stereophile.com/content/vivid-audio-giya-g1-spirit-loudspeaker-measurements
- Searching for the Extreme: Laurence Dickie of Vivid Audio — Part One - SoundStage! Ultra, https://www.soundstageultra.com/index.php/features-menu/general-interest-interviews-menu/242-searching-for-the-extreme-laurence-dickie-of-vivid-audio-part-one
- Blog - Nautilus - Bowers & Wilkins, https://www.bowerswilkins.com/en-us/blog/products/history-of-nautilus.html
- Vivid Audio Giya G1 Spirit loudspeaker | Stereophile.com, https://www.stereophile.com/content/vivid-audio-giya-g1-spirit-loudspeaker
- Giya G1 Series 2 - VIVID Audio, https://vividaudio.com/legacy/giya-g1-series-2/
- Wilson Audio Specialties Alexia V loudspeaker - Stereophile.com, https://www.stereophile.com/content/wilson-audio-specialties-alexia-v-loudspeaker
- Munich High End 2019: Loudspeakers - The Absolute Sound, https://www.theabsolutesound.com/articles/munich-high-end-2019-loudspeakers/
- https://www.soundstageultra.com/index.php/equipment-menu/923-magico-m2-loudspeakers
- Maestro Utopia Evo White Carrara - Focal Naim America, https://focalnaimamerica.com/product/view/1155
- Focal Maestro Utopia EVO Loudspeakers (each) - Upscale Audio, https://upscaleaudio.com/products/focal-maestro-utopia-evo
- Vivid Audio Giya G1 Spirit loudspeaker Lab Report | Hi-Fi News, https://www.hifinews.com/content/vivid-audio-giya-g1-spirit-loudspeaker-lab-report
- Vivid G1 Spirit review | AudioShark Forums - High End Audio, Stereo …, https://www.audioshark.org/threads/vivid-g1-spirit-review.12163/
- Vivid Speakers & Naim - Page 3 - Hi-Fi Corner, https://community.naimaudio.com/t/vivid-speakers-naim/19614?page=3
- Had a taste of the good life last night : r/audiophile - Reddit, https://www.reddit.com/r/audiophile/comments/rleq18/had_a_taste_of_the_good_life_last_night/
- VIVID AUDIO Giya G1 Spirit - Audiodrom, https://www.audiodrom.net/en/floorstanding-loudspeakers/detail/28-floorstanding-loudspeakers/726-vivid-audio-giya-g1-spirit
- SoundStageHiFi.com - Wilson Audio Alexia vs … - SoundStage! Hi-Fi, https://www.soundstagehifi.com/index.php/reader-feedback/590-wilson-audio-alexia-vs-vivid-audio-giya-g1-or-g2