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B&W 805 D4 レビュー:形態は機能に従う、されど音は魂に従う

B&W 805 D4 レビュー:形態は機能に従う、されど音は魂に従う

2025/08/18 公開
Bowers & Wilkins
805 D4
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オーディオの世界における「リファレンス・モニター」という言葉は、ある種の絶対的な指標を示唆する。それは色付けなく、歪みなく、ただ録音された信号を忠実に空気の振動へと変換する、完璧な測定器としての理想像である。しかし、我々は自問せねばならない。完璧な測定器は、果たして完璧な芸術を生み出すのだろうか。この問いこそ、Bowers & Wilkins(以下B&W)の800 Seriesがその永い歴史を通じて探求し続けてきた根源的なテーマではなかろうか。彼らは、レコーディングスタジオが要求する冷徹な「真実」と、オーディオファイルが希求する官能的な「美」との交差点に、常に立ち続けてきたのである 1

ここに登場する805 D4は、そのフラッグシップ・ラインにおける最小のモデルでありながら、その設計哲学が最も凝縮された存在と言っても過言ではない。それは、801 D4のような巨大なフロアスタンディング型リファレンスの本質を、コンパクトな2ウェイという形式へと蒸留するという、根源的な挑戦の結晶である。物理的な制約と、音響的な野心との間に横たわる緊張関係。本稿は、この805 D4という類稀なるスピーカーが内包するその葛藤と、それがもたらす音響的達成を解き明かすための、思索の旅である。

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B&W 805 D4 — 技術仕様の概観

  • メーカー / 型番: Bowers & Wilkins / 805 D4
  • 発売時期: 2021年9月下旬 4
  • 価格帯:
    • スピーカー本体: USD $10,000 (ペア) 5 / JPY ¥1,382,040 (ペア、税込) 4
    • 専用スタンド (FS-805 D4): USD $1,720 (ペア) 6 / JPY ¥184,800 (ペア、税込) 7
  • 主要スペック:
    • 形式: 2ウェイ・バスレフ型システム
    • ドライブユニット: 1x ø25mm (1インチ) ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター, 1x ø165mm (6.5インチ) コンティニュアム・コーン・ベース/ミッドレンジ
    • 周波数レンジ (-6dB): 34Hz ~ 35kHz
    • 周波数レスポンス (±3dB): 42Hz ~ 28kHz
    • 感度: 88dB (2.83Vrms, 1m)
    • 公称インピーダンス: 8Ω (最小 4.6Ω)
    • 推奨アンプ出力: 50W – 120W (8Ω)
    • 寸法 (高さ x 幅 x 奥行): 440mm x 240mm x 373mm
    • 質量: 15.55kg
    • 出典: B&W 公式インフォメーションシート8

1. 各メディアの評価概要

メディア引用抜粋 (和訳+原文)評価点バイアス評価
What Hi-Fi?「クラスをリードする明瞭さと解像度… オープンで俊敏、そして明瞭。」 “Class-leading clarity and resolution… Open, agile and articulate.” 9★★★★★メーカー提供サンプルによる専門誌レビュー。肯定的側面に光を当てる傾向はあるが、基本的な音質特性の記述は信頼性が高い。
The Absolute Sound「B&Wは殺人的な量と質の低音を持つ… そのサイズからは考えられないスケールのサウンドステージを創り出す。」 “…the B&W has bass quantity and quality to kill for… can create a soundstage with a scale unheard of from a speaker of its size.” 10Golden Ear Award 2023高い評価を得ている専門誌。提供サンプルによるレビュー。「Golden Ear」受賞は強い肯定的評価を示すが、分析は詳細で信頼に足る。
Stereophile (測定)「B&Wのウォーターフォールプロットは極めてクリーンだ… しかし、その高周波レスポンスは、良く言えば『調整されている』。」 “The B&W’s waterfall plot is superbly clean… but its high-frequency response is, for want of a better word, ‘tailored.’” 12N/A客観的なラボ測定。技術分析に不可欠。「調整されている」という表現は、フラットでない周波数特性を中立的に記述しており、ユーザーの「明るい」という主張を裏付ける。
SoundStage! Ultra「805 D4はニュートラルなスピーカーではない… ただ聴くのではなく、スリルを味わいたいなら、805 D4はあなたの終着点かもしれない。」 “The 805 D4 is not a neutral loudspeaker… if you don’t want to listen so much as to be thrilled, then the 805 D4 may be your endgame.” 13Reviewer’s Choiceニュートラルでない特性を意図的な「鮮やかで刺激的な」音作りと捉える、ニュアンスに富んだ視点。バイアスは比較的少ない。
Reddit ユーザー「私の耳には… 高域はディテール豊かでオープンだったが、『エッジが立つ』とか『過度に明るい』とは感じなかった。」 “To my ears… the highs were detailed and open, but not ‘edgy’ or overly bright.” 14肯定的ユーザーレビュー。主観的バイアスは強いが、過度な明るさという評価への反証として価値がある。システムマッチング(Luxmanアンプ)の重要性を示唆。
YouTube ユーザーコメント「最初は低音が多すぎてブーミーに感じたが、今はちょうど良い… ダイヤモンドツイーターは実に自然だ。」 “At first, I found the bass too much and boomy, now they are sounding just right… The diamond tweeter is just so natural.” 15肯定的 (エージング後)オーナーによる実体験。短期的な専門レビューでは見過ごされがちなエージング期間の重要性を指摘している。

集計: 専門メディアのレビューの大半は、805 D4のクラス最高レベルの明瞭さ、解像度、そしてビルドクオリティを称賛している。そのサイズからは想像もつかない広大なサウンドステージを形成する能力は、繰り返し言及されるテーマである。しかし、客観的な測定データやユーザーフォーラムでの議論は、意図的に「調整された」、あるいは「ホットな」高域特性を指摘している。低域は、サイズを考慮すればタイトで明瞭、そして印象的であると一貫して評価されているが、物理法則を超えるものではなく、全帯域を満足させるにはサブウーファーが必要になるという但し書きが付く。総じて、評価は極めて肯定的だが、その特徴的な高域を巧みにコントロールするための、慎重なシステムマッチングが成功の鍵となるだろう。

2. 工学という名の芸術 — 技術的深淵

805 D4の設計を単なる部品の集合体としてではなく、個々の要素が特定の音響的目的を果たすための統合的システムとして捉えるとき、その真価が見えてくる。その根底には、スピーカーキャビネットという存在そのものを音響方程式から消し去ろうとする、B&Wの長年にわたる執念が存在する 1

ダイヤモンド・ドーム・トゥイーターとソリッドボディ

805 D4の音響的シグネチャーを定義づけるのは、間違いなくダイヤモンド・ドーム・トゥイーターであろう。化学気相成長法によって生成される人工ダイヤモンドは、その比類なき剛性と軽さの比率により、トゥイーターの振動板として理想に近い素材である 5。これにより、分割振動(いわゆる「リンギング」)の発生周波数が可聴帯域を遥かに超える70kHzにまで押し上げられ、結果として極めて歪みの少ない、純粋な高域再生が可能となる 18

この卓越したユニットを収めるのが、無垢のアルミニウム塊から削り出された「ソリッドボディ・トゥイーター・オン・トップ」である。これは単なるデザイン上の特徴ではない。後方へと伸びるテーパー形状のチューブは、同社の記念碑的モデル「Nautilus」の技術思想を継承するものであり、振動板の背面に放射される不要なエネルギーを吸収・減衰させる役割を担う 5。D4世代ではこのチューブがD3世代よりも長くなっており、エネルギー吸収効率をさらに高めるための地道な改良が施されている 3

コンティニュアム・コーン

長らくB&Wの象徴であった黄色いケブラーコーンに代わり採用されたのが、独自の複合織物素材からなるコンティニュアム・コーンである。その設計思想は「最適化され、制御された柔軟性」にある 2。従来の硬直な振動板が、その動作限界を超えると急激に分割振動を起こし音を濁らせるのに対し、コンティニュアム・コーンはより予測可能で穏やかな挙動を示す。これにより、中音域における開放性とニュートラリティが劇的に向上し、声や楽器の質感をより忠実に再現することが可能となった。

キャビネットというシステム

805 D4における最大の進化は、キャビネット構造そのものにあると言えよう。

  • リバース・ラップ・キャビネット: 805モデルとしては初めて、上位モデルと同じ「リバース・ラップ」構造が採用された。これは、フロントバッフルと側板を一体の積層合板から熱と圧力で成形する技術である 9。継ぎ目をなくすことで、構造的な剛性を飛躍的に高め、共振を抑制する。これは、平坦なバッフルを持っていた805 D3からの根本的な構造変更である 13
  • マトリックス・ブレイシング: 1987年以来のB&Wの伝統である内部補強構造「マトリックス」も進化を遂げた。D3世代のMDFから、より強固な合板へと素材が変更され、さらに要所にはアルミニウムによる補強が加えられている。この骨格構造は、キャビネットの壁面を可能な限り音響的に不活性なものとし、不要な色付けを徹底的に排除することを目的とする 2
  • リアマウント・クロスオーバー: クロスオーバー・ネットワークは、キャビネット背面のアルミニウム製スパイン(背骨)にマウントされている。これにより、繊細な電子部品をキャビネット内部の気圧変動や振動から隔離すると同時に、スパイン自体がヒートシンクとして機能し、安定した性能を維持する 3

これらの技術的選択は、一つの壮大な物語を紡ぎ出している。それは、創業者ジョン・バウワースが抱いた「スピーカーキャビネットは音にとって最大の敵である」という信念から始まる物語だ 1。初期のドライバー分離構造、マトリックスによる内部補強、そしてNautilusにおける背圧処理という革新。805 D4は、これら40年以上にわたる探求の論理的帰結なのである。その形態の一つ一つが、キャビネットを音響的に消滅させるという、ただ一つの哲学に従っているのだ。

競合製品との技術仕様比較

特徴B&Ws 805 D4KEF Reference 1 MetaSonus Faber Guarneri G5Magico A1
価格 (USD/ペア)約 $10,000約 $9,000約 $20,000 (スタンド込)約 $9,800
形式2ウェイ・フロントポート3ウェイ・リアポート2ウェイ・リアポート2ウェイ・密閉型
キャビネット素材合板 (リバース・ラップ), アルミMDF, アルミバッフル積層木材, アルミ6061 T6 航空機グレードアルミ
トゥイーター25mm ダイヤモンド・ドーム25mm アルミ・ドーム (Uni-Q w/ MAT)28mm DAD ソフトドーム28mm ベリリウム・ドーム
ミッド/ベース165mm コンティニュアム・コーン125mm アルミ (Uni-Q) + 165mm アルミ150mm セルロース・パルプ165mm グラフェン・ナノテック
周波数レスポンス42Hz – 28kHz (±3dB)45Hz - 35kHz (±3dB)40Hz – 35kHzN/A (密閉型)
感度88dB85dB86dB85dB
インピーダンス (公称/最小)8Ω / 4.6Ω4Ω / 3.2Ω4Ω / N/A4Ω / 3.2Ω
寸法 (HWD, mm)440 x 240 x 373440 x 205 x 430377 x 239 x 375396 x 216 x 272
質量 (kg/台)15.55 kg18.2 kg16 kg22 kg
出典8212224

3. 音の風景、魂の響き — 聴感上の探求

レビュアー / 媒体引用抜粋 (和訳+原文)
Alan Taffel / The Absolute Sound「最高の小型2ウェイスピーカーがそうであるように、D4は完全に姿を消し、驚くほどタイトな音像のサウンドステージを投げる。しかし、同類の多くとは異なり、このB&Wは殺人的な量と質の低音を持っている。」 “Like all the best small two-way speakers, the D4 disappears completely and throws a soundstage with uncannily tight imaging. However, unlike most of its ilk, the B&W has bass quantity and quality to kill for.”
What Hi-Fi?「絶対的な明瞭さはクラス最高であり、音の立ち上がりから後続の倍音までを追跡する805 D4の能力も同様だ。スピーカーはこれ以上なく俊敏で明瞭である…」 “Outright clarity is class-leading, as is the 805 D4’s ability to track the envelope of a note from its leading edge to its trailing harmonics. The speakers are as agile and articulate as they come…”
Hans Wetzel / SoundStage! Ultra「805 D4はニュートラルなスピーカーではない… しかし、もしあなたが全体的により鮮やかでエキサイティングなものを求めているなら… 805 D4はあなたの終着点となるブックシェルフスピーカーかもしれない。」 “The 805 D4 is not a neutral loudspeaker… But if you’re after something altogether more vivid and exciting… then the 805 D4 may be your endgame bookshelf speaker.”
Naim Forum User “Hallowed_be_thy_Naim”「ダイヤモンドツイーターは素晴らしい。高域は輝かしいが、厳しくはない。しかし、これが全ての人にアピールするわけではないだろうことは理解できる。」 “The diamond tweeter is superb. High frequencies are sparkling, but not harsh. However I could see this may not appeal to all.”

ジャンル別聴感分析

クラシック(オーケストラ):
オルフの『カルミナ・ブラーナ』のような複雑なオーケストラ曲を再生させると、805 D4の真価が明らかになる 9。その音響的風景は、スピーカーの物理的なサイズを完全に忘れさせるほど広大である。特筆すべきは、その驚異的な解像度と空間定義能力だ。ダイヤモンド・トゥイーターの俊敏性と、極限まで共振を抑え込んだキャビネットの組み合わせが、各楽器のパートを明瞭に分離し、混濁することなくリスナーに届ける。それは単なる分析的な音の分解ではなく、各楽器が定位する空間の深さや広がりまでも再現する、ホログラフィックな体験と言えよう。多くのレビューが指摘する「箱から解放された (out-of-the-box)」という表現は、まさにこの感覚を的確に捉えている 9

ジャズ(ヴォーカル & 小編成):
女性ヴォーカルを聴けば、コンティニュアム・コーンがもたらす中音域の純粋さに感嘆するに違いない 3。声の質感、息遣いの微細なニュアンスが生々しく、まるで目の前で歌っているかのような錯覚を覚える。What Hi-Fi?が「俊敏で明瞭 (agile and articulate)」と評したように 9、サックスのソロにおけるマイクロダイナミクスの変化や、シンバルの金属的な響きが消えゆく様を、驚くべきリアリズムで描き出す。Stereophileの測定が示す「調整された」高域特性 12 は、ここに独特の「空気感」や「輝き」を付加する。これは録音によっては生命感あふれる演出となる一方、リスナーの好みやシステムによっては僅かな色彩感として感じられるかもしれない。

EDM / ロック(低域とダイナミクス):
ブックシェルフスピーカーの限界が問われるこの領域で、805 D4は驚くべきパフォーマンスを見せる。The Absolute Sound誌が「殺人的な低音 (bass to kill for)」とまで評したその低域は 11、量感よりも質感を重視した結果であろう。その本質は、圧倒的なスピードと制動力にある。電子音楽のタイトなキックドラムは、遅れることなく、そして余分な響きを引きずることなく、鋭く空間を打ち抜く。しかし、物理法則を覆すことはできない。公称スペックが示す通り、42Hz (-3dB) 以下の超低域は再生範囲外であり 8、映画のLFEやパイプオルガンの最も低いペダルノートを完全に再現するには、やはり質の高いサブウーファーの助けが必要となるだろう 3。805 D4が選択したのは、量感の追求ではなく、あくまでも音程とリズムを正確に描き出す「明瞭性 (articulation)」なのである。これは、ハイエンド・モニターとしての極めて理性的な設計思想の表れに他ならない。

4. 価値の天秤 — 多角的な評価

評価軸採点 (5点満点)解説
技術性能★★★★★現代スピーカー工学の粋を集めた傑作。ダイヤモンド・トゥイーター、コンティニュアム・コーン、そして革新的なリバース・ラップ/マトリックス・キャビネットの組み合わせは、B&Wの研究開発の頂点を示す 2。測定上の性能は完全なニュートラルではないものの、歪みと共振の卓越した制御能力を証明している 12。これは、明確な音響的目標に奉仕する工学の理想形である。
音楽的魅力★★★★☆類稀なる没入感とスリルを提供する。その核となる強み―明瞭さ、スピード、イメージング―は、聴き手を深く音楽に引き込む 10。しかし、その「鮮やか」で「分析的」な性格 9 は、あらゆる音源を許容するスピーカーではないことを意味する。小音量では魅力が薄れ 9、暖かさやリラックス感を最優先する向きには合わないかもしれない。その魅力は強力だが、特定の方向性を持つ。
ビルドクオリティ★★★★★非の打ちどころがない。ほぼ全てのレビューで「極上 (exquisite)」「美しく作られている (beautifully made)」と評されている 3。積層合板、無垢のアルミニウム、そして英コノリー社製レザーといった高級素材の使用 13 と、自動車グレードの塗装仕上げは、このクラスの頂点に位置する。価格が示唆する高級製品としての期待を裏切らない。
価格対価値★★★☆☆複雑な評価軸である。約140万円という価格は大きな投資だ。一部のレビューでは、同等の技術と品質をブティックブランドに求めれば倍の価格になるため「相対的にお買い得」と評される 10。しかし、ユーザーフォーラムなどでは、KEF R3 Metaのような製品が数分の一の価格で性能の大部分を提供することや 14、同社の804 D4を含む優れたフロアスタンダーと直接競合する価格帯であることが指摘される 26。その価値は、低域の伸びやニュートラリティよりも、本機特有の強み(イメージング、ビルド品質)をどれだけ優先するかによって大きく変動する。
将来性 / 修理性★★★★☆主要メーカー製のパッシブスピーカーとして、その基本技術が陳腐化することはない。800シリーズは高いリセールバリューを維持している 3。リアマウントされたクロスオーバーは修理の容易性にも貢献する 5。唯一の懸念は、その明確な音響的個性がオーディオのトレンドと共に評価を変える可能性だが、その根源的な品質は揺るがないだろう。

客観的測定データに基づく深層分析

主観的な聴感印象を裏付けるのが、冷徹な測定データである。Stereophile誌やHi-Fi News誌によって公開された詳細なラボ測定は、805 D4の音響的性格を構成する物理的特性を浮き彫りにする 12

周波数特性と意図された音作り:
軸上周波数特性は、B&Wが純粋なフラット特性ではなく、意図的に「調整された (tailored)」音響バランスを目指したことを明確に示している 12。特に、高域は周波数と共に滑らかに上昇し、9kHzから10kHzにかけてピークを形成する 12。この特性は、多くのレビューで語られる「空気感 (air)」や「鮮やかさ (vividness)」の物理的根源であり、知覚されるディテールを最大化するための設計思想の表れと言えよう 12。一方で、中音域には僅かな抑制が見られ、これが一部のリスナーに「Uカーブ」的なサウンドと認識される要因かもしれない 12

インピーダンスとアンプへの要求:
公称インピーダンスは8Ωとされているが、その実態はより複雑である 5。Stereophileの測定によれば、実効抵抗(EPDR)は特定の周波数帯で大きく低下し、特に8.9kHzから10kHzの間では2Ωにまで達する 12。これは、805 D4がアンプに対して「比較的電流を要求する負荷 (relatively current-hungry load)」であることを意味する 12。質の低いアンプでは、大音量時に音が硬化する可能性があり、このスピーカーの真価を引き出すには、駆動力に余裕のある、安定したパワーアンプが不可欠であることをデータは示唆している 12

歪みと共振の抑制:
本機の最も卓越した性能の一つが、極めて低い歪み率である。B&Wの公式スペックでは90Hzから20kHzの帯域で1%未満、120Hz以上では0.3%未満という優れた値が示されている 5。独立した測定でも、50Hz、90dBという厳しい条件下でさえTHDは0.23%に留まり、高域ではさらに低い値を示す 18。これは、ダイヤモンド・トゥイーターとコンティニュアム・コーンの素材的優位性、そして何よりもキャビネットの共振を徹底的に排除した結果に他ならない。加速度計による測定では、キャビネットの共振モードは極めて低レベルかつ高Q値であり、聴感上の影響は皆無に近いと結論付けられている 12

時間領域応答 (CSD/ウォーターフォール):
累積スペクトル減衰(ウォーターフォール)プロットは、805 D4の時間領域における応答がいかにクリーンであるかを物語っている 12。プロットは、入力信号が停止した後に不要なエネルギー(リンギング)がほとんど残らないことを示しており、これは音の立ち上がりと立ち下がりの速さ、そして音符間の静寂の深さに直結する。1.4kHz付近にコーンの終端処理に起因する可能性のある僅かな遅延エネルギーが見られるものの、全体としては「極めてクリーン (superbly clean)」と評価されており、その明瞭で俊敏な音質の根拠となっている 12
総じて、測定データは805 D4が「教科書通りのニュートラル」なスピーカーではないことを認めつつも、歪み、共振、時間領域応答といった基本的な性能において、現代スピーカー工学の最高水準にあることを証明している。その音響的個性は、偶然の産物ではなく、明確な意図をもって設計された、高度なエンジニアリングの結晶なのである。

ポジティブ/ネガティブ要素の再検証: 「明瞭さ」と「明るさ」の二元論

805 D4を巡る評価を深く分析すると、一つの興味深い二元論が浮かび上がる。それは、高域の表現に関する「明瞭さ (Clarity)」と「明るさ (Brightness)」という、表裏一体の評価である。

専門誌のレビューは、「解像度」「輝き」「空気感」といった言葉でその高域を称賛する 9。一方で、ユーザーフォーラムや客観的測定に重きを置くコミュニティでは、「明るい」「ホット」「聴き疲れする」といった批判的な意見も散見される 14。この食い違いはどこから来るのか。

答えの鍵は、Stereophile誌による測定データにある 12。データは、9kHzから10kHzにかけてピークを持つ、意図的に「調整された」高域特性を明確に示している。これは、双方の主観的評価を裏付ける物理的根拠に他ならない。この高域の持ち上がりは、状況によってその貌を変える。音響的に整備された試聴室で、質の高い録音を、おそらくは僅かにウォームな傾向を持つハイエンド機器で再生した場合、それは驚異的な「明瞭さ」や「ディテール」として知覚されるだろう。これが、メーカー提供サンプルによるレビューで肯定的な評価が多くなる一つの要因かもしれない。

しかし、一般的な家庭環境で、多様な品質の録音を、ニュートラルもしくはブライトな傾向を持つ機器で再生した場合、同じ特性が許容範囲を超え、「明るさ」や「刺々しさ」として感じられる可能性がある。

結論として、805 D4の最も議論を呼ぶ特性は、欠陥ではなく、意図された設計思想の表れなのである。それは、最大限の知覚的解像度を目指して設計されている。この一つの音響的特徴が、システムのコンテクストやリスナーの感性によって、最大の美点とも、最大の課題ともなり得るのだ。この点を理解することこそ、805 D4を正しく評価するための第一歩と言えよう。

5. 時代の潮流と存在意義 — 805 D4の位置付け

805 D3からの飛躍

D3からD4への進化は、単なるマイナーチェンジではない。前述の通り、リバース・ラップ・キャビネットの採用は、805を初めて構造的に他の800シリーズと完全に同列に並べた、根本的な変革である 13。音響的には、D4世代はD3世代に比べてより暖かく、自然で、アッパーミッドレンジの「熱っぽさ」が緩和されたと評されることが多い 29。これは、B&Wが自社のハウスサウンドを、より洗練され、聴き疲れの少ない方向へと意識的に進化させていることを示唆しているのかもしれない 19

スタンドマウント vs フロアスタンディング (対 804 D4)

805 D4の価格は、その兄貴分であるフロアスタンディング、804 D4に肉薄する 26。これは購入検討者にとって、ある種の哲学的選択を迫る。

  • 805 D4を選択する理由: それは、2ウェイ・ポイントソース・モニターという形式の究極を求める思想である。より大型で複雑なマルチドライバーシステムでは達成が困難な、卓越した音像定位と「スピーカーが消える」感覚を提供する可能性を秘めている 10。音の一体感と空間の精密描写を何よりも優先するピュアリストのための選択肢だ。
  • 804 D4を選択する理由: こちらは、2基の専用ベースドライバーと専用ミッドレンジコーンを備えた3ウェイ設計である 5。それは、より広大なスケール感、パワー、そして遥かに深い低域の伸びを意味する。専用ミッドレンジは、声や楽器の再現性においてさらなる正確さをもたらす可能性がある 5。より大きな部屋で、あるいはサブウーファーなしでフルレンジのサウンドを求めるリスナーにとって、より実用的で万能な選択肢と言えるだろう。

この二者択一は、805 D4の存在意義そのものを浮き彫りにする。805 D4は、単なる800シリーズの「エントリーモデル」ではない。それは、スタンドマウントという物理的制約の中で何が可能か、というB&Wの「ステートメント(声明)」なのである。それは、妥協なき品質をコンパクトな形態で求める、特定のオーディオファイルの要求に応えるために存在する。その存在理由は、市場のセグメンテーションではなく、音響的野心によってのみ説明されるのだ。

音響哲学の交差点:競合機との聴感比較

805 D4の真の価値を理解するためには、同価格帯に存在する他の思想的巨星たちとの対話が不可欠である。それぞれが異なる音響哲学を掲げるこれらの競合機は、805 D4が選択した道筋を鮮やかに照らし出す鏡となる。

対 KEF Reference 1 Meta:科学的忠実性との対話
KEFは、そのUni-Q同軸ドライバーとMAT(メタマテリアル吸音技術)を武器に、測定上の忠実性と点音源の理想を追求する 32。その音は、多くのオーディオファイルから「ニュートラル」で「正確」と評される 34。対する805 D4は、意図的に調整された高域特性がもたらす「鮮やかさ」と「空気感」を特徴とする 13。これは、B&Wが持つ「ハウスサウンド」の現れであり、一部では「Uカーブ」と評されることもあるエキサイティングな音作りだ 34。What Hi-Fi?誌は、KEF Reference 1 Metaが805 D4よりも深く、権威のある低音を再生する能力を指摘しており、物理的な側面を重視するならばKEFに分があるかもしれない 9。選択は、純粋な科学的再現性を求めるか、それともB&Wが提示する芸術的解釈に身を委ねるか、という哲学的な問いに帰着するだろう。

対 Magico A1:絶対的静寂からの音
Magico A1は、航空機グレードのアルミニウムからなる密閉型エンクロージャーという、全く異なるアプローチを取る 24。これは、ポートによる低域増強を潔く捨て去り、過渡特性の正確さと設置場所への寛容性を手に入れるための選択である 24。その音は「均衡がとれ、洞察に満ちている」と評され、録音された信号を誇張なく、ありのままに提示することに重きを置く 36。これは、805 D4の「スリルを味わう」ための音作りとは対照的だ 13。あるレビュアーは、ハイエンドのB&WとMagicoを比較試聴した際、両者が「同じ土俵にいない」と感じたと述べており、Magicoがよりニュートラルで洗練された音響世界を目指していることを示唆している 37。805 D4が光と影のコントラストでドラマを描く画家だとすれば、Magico A1は被写体の本質を静かに捉える写真家と言えるかもしれない。

対 Sonus Faber Guarneri G5:楽器としてのスピーカー
イタリアの至宝、Sonus Faberはその名の通り、スピーカーを単なる再生装置ではなく、それ自体が音楽を奏でる「楽器」として捉える 39。Guarneri G5は、そのリュート型キャビネットと伝統的な素材選びから、「暖かく」「豊潤で」「音楽的」な音色を紡ぎ出すことで知られる 40。これは、805 D4の分析的でクールな明晰さとは正反対の魅力である。あるレビュアーは、Sonus Faberが持つ中音域の「驚異的な豊かさ」と「ホログラフィックなサウンドステージ」を称賛する一方、B&Wは「パワフルでパンチがあり、明るい高域」を持つと評している 42。Guarneri G5は、音楽に没入し、その感情的な側面に浸りたいリスナーに訴えかける。対して805 D4は、音楽の構造そのものを解き明かし、その知的な側面に光を当てる。どちらも頂点を目指しているが、その登山ルートは全く異なるのである。

軸外特性と空間音響 — 測定データからの洞察

スピーカーの真価は、リスニングポイントに直接届く音(軸上特性)だけでなく、壁や天井、床に反射して耳に届く音(軸外特性)によっても大きく左右される。Stereophile誌などが提供する詳細な測定データは、805 D4がリスニングルームという現実の空間でどのように振る舞うかを科学的に解き明かしてくれる 12

まず、805 D4の水平方向の音の広がり(水平指向性)は、非常に良好に制御されていることが示されている 12。中音域から中高音域にかけて、軸を外れても周波数特性の乱れが少なく、これは正確で安定したステレオイメージングの形成に不可欠な要素である 12。この特性は、側壁からの一次反射音が直接音と似た音色を持つことを意味し、空間全体の音響的調和を高める上で極めて重要だ 43

一方で、垂直方向の指向性はより限定的である 12。測定データは、ツイーターの軸から上下に5度以上ずれると、クロスオーバー周波数付近で特性が変化することを示している 12。これは、リスナーの耳の高さをツイーターの高さに正確に合わせることの重要性を示唆しており、このスピーカーの性能を最大限に引き出すための設置上の要件と言えるだろう。

B&Wの象徴的な「ツイーター・オン・トップ」設計は、この指向特性に大きく関わっている。一部の測定派コミュニティでは、この設計がバッフルを持たないため、現代のスピーカー設計で主流のウェーブガイドによる指向性制御とは逆行し、高域を広く拡散させすぎるとの批判的な見解も存在する 44。しかし、この広い拡散こそが、B&W特有の「空気感」や「開放感」を生み出す要因の一つであり、意図された音響設計の結果なのである。そして、この特性はユーザーによる調整の余地を残している。高域の軸上ピーク付近では指向性が狭まるため、スピーカーの「トーイン(内振り角度)」を調整することで、リスニングポイントに届く高域エネルギーの量を効果的にコントロールできる 12

結論として、805 D4は測定データ上、完璧にフラットな特性を持つスピーカーではない。しかし、その軸外特性、特に水平方向の素直な挙動は、設計の成熟度の高さを物語っている。その音響的個性は意図的な設計思想の産物であり、設置、特にリスニングの高さとトーインの角度を追い込むことで、その真価をリスニングルームに解き放つことができるのである。

6. 結論 & 推奨ユーザー

このスピーカーを推奨したい人

  • 分析的なリスナー: ディテール、解像度、透明性を最優先し、録音の隅々まで聴き込みたいオーディオファイル 9
  • イメージングの探求者: ホログラフィックな3Dサウンドステージと、スピーカーの存在が完全に消える体験を至上とするリスナー 10
  • 品質と美学を重視する人: 最高級のビルドクオリティ、素材、工業デザインを評価し、その対価を支払うことを厭わない個人 3
  • 中小規模の部屋のユーザー: 大型フロアスタンダーでは持て余すような空間において、その形態と低域出力は理想的である 3

このスピーカーを避けるべき人

  • 「暖かさ」を最優先するリスナー: 豊かで、寛容で、リラックスした音調を好む向き。805 D4の個性は鮮やかで刺激的であり、暖かく心地よいものではない 13
  • ブライトな周辺機器の所有者: 元々明るい傾向のコンポーネントと組み合わせると、容易に聴き疲れするサウンドになる可能性がある 14。ニュートラルからウォームな機器との慎重なマッチングが不可欠である。
  • 小音量で聴くことが多い人: このスピーカーは、ある程度の音量を与えられて初めて真価を発揮し、極端な小音量では生命感に欠けると感じられるかもしれない 9
  • 低音マニア(サブウーファーなしの場合): サイズを超えた素晴らしい低音を持つが、電子音楽や映画の最深部の衝撃を求めるなら、高品質なサブウーファーの追加予算を組む必要がある 3

将来性

高品質なパッシブスピーカーとして、アンプやソース機器のアップグレードによってその性能をさらに引き出すことが可能である。このクラスの製品に後からの改造はそぐわない。その価値は、工場で完成された完璧な状態にある。

総合評価: ★★★★☆ (4.5/5)

技術的に極めて優れ、音楽的にスリリングな体験を提供する、スタンドマウントスピーカーの一つの到達点。明瞭さとビルドクオリティにおいて新たな基準を打ち立てた。しかし、それは万能のスピーカーではなく、明確な個性を持つ専門的な楽器である。その際立った音響的個性と価格設定が、万人への普遍的な推奨を躊躇させる。それゆえに、満点の評価には至らないが、その意図された目的においては、ほぼ完璧に近い達成度を示していると言えよう。


引用文献

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2. Bowers and Wilkins 800 D4 Diamond Series Speakers Review - Audio Advice, https://www.audioadvice.com/blogs/expert-advice/bowers-wilkins-800-d4-diamond-series-review
3. Bowers & Wilkins 805 D4 Speakers Reviewed - Future Audiophile, https://futureaudiophile.com/bowers-wilkins-805-d4-loudspeakers-reviewed/
4. Bowers & Wilkins 805 D4 [グロス・ブラック 単品] 価格比較 - 価格.com, https://kakaku.com/item/K0001380673/
5. 805 D4 - Flagship 800 Series Diamond stand mount speakers - Bowers & Wilkins, https://www.bowerswilkins.com/en-us/product/loudspeakers/800-series-diamond/805-d4/150241.html
6. FS-805 D4 - Premium 805 D4 loudspeaker stand | Bowers & Wilkins - United States, https://www.bowerswilkins.com/en-us/product/accessories/fs-805-d4/150348.html
7. Bowers & Wilkins 805 D4 800シリーズDiamond - AVBOX, https://avbox.co.jp/bowers-wilkins/bowers-and-wilkins-805d4/
8. 805 D4 Information Sheet - outlined fonts.indd - Bowers & Wilkins, https://www.bowerswilkins.com/on/demandware.static/-/Library-Sites-bowers_northamerica_shared/default/dw2674132f/downloads/805d4-information-sheet.pdf
9. Bowers & Wilkins 805 D4 review | What Hi-Fi?, https://www.whathifi.com/reviews/bowers-and-wilkins-805-d4-speakers
10. 2023 Golden Ear: Bowers and Wilkins 805 D4 Loudspeaker - The Absolute Sound, https://www.theabsolutesound.com/articles/2023-golden-ear-bowers-and-wilkins-805-d4-loudspeaker/
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12. Bowers & Wilkins 805 D4 Signature loudspeaker Measurements …, https://www.stereophile.com/content/bowers-wilkins-805-d4-signature-loudspeaker-measurements
13. Bowers & Wilkins 805 D4 Loudspeakers - SoundStage! Ultra, https://www.soundstageultra.com/index.php/equipment-menu/1061-bowers-wilkins-805-d4-loudspeakers
14. It’s happening in my listening room. Meta R3 and 805 D4. : r/audiophile - Reddit, https://www.reddit.com/r/audiophile/comments/1gh6g16/its_happening_in_my_listening_room_meta_r3_and/
15. Best HIGH END Speakers Compared!!! B&W 805 D4 Review - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=VogDCKK_BFM
16. Blog - History of 800 Series - Bowers & Wilkins, https://www.bowerswilkins.com/en-us/blog/products/history-of-800-series.html
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