オーディオの世界には、進化が宿命づけられた血統というものが存在する。ポルシェ911がそうであるように、Wilson AudioのWATT/Puppyから連なる系譜は、その最たる例だろう 1。オリジナルのコンセプトを核に据えながら、時代の最先端技術を貪欲に取り込み、自己を更新し続ける。その最新世代が、今回レビューするSasha Vだ。
一見すれば、その姿は前作Sasha DAWの面影を色濃く残す。しかし、その穏やかな表情の裏には、ブランドのフラッグシップ、Chronosonic XVXから滴り落ちた技術の粋が、静かに、しかし確実に脈打っている 2。その心臓部に埋め込まれた「V-Material」の名を冠するこのスピーカーは、単なるマイナーチェンジではない。これは、Wilson Audioというブランドが次なるステージへと踏み出すための、静かな、しかし断固たる革命の狼煙なのだ。
また、このスピーカーは、1985年の「WATT (Wilson Audio Tiny Tot)」に端を発し、オーディオ史にその名を刻んだ「WATT/Puppy」という偉大な血統の、正統な後継者である 。Hi-Fi Newsのレビュアーが言うように、これは「WATT Puppy System 12」と呼ぶべき存在かもしれない 1。
本稿では、この「V」の称号がもたらした真価を、技術的な解剖、冷徹な測定データ、そして音楽の魂に触れる試聴を通じて、多角的に解き明かしていく。果たしてSasha Vは、伝統という名の静寂を守るだけの継承者なのか。それとも、音楽体験そのものを塗り替える情熱の改革者なのか。その答えを探す旅に出よう。
Wilson Audio Sasha V — Overview
まずは、このスピーカーのIDカードを提示することから始めよう。議論の出発点となる客観的な事実だ。
- メーカー: Wilson Audio Specialties Inc. (米国 ユタ州プロボ) 4
- モデル名: Sasha V
- 発売日: 2023年6月発表 5。日本国内受注開始は2023年10月2日 7。
- 価格帯:
- 国内代理店: 株式会社ステラ (2018年9月より) 10。
主要スペック
- ドライバー構成:
- ツイーター: 1インチ (2.54 cm) Convergent Synergy Carbon (CSC) ドーム
- ミッドレンジ: 7インチ (17.78 cm) AlNiCo QuadraMag
- ウーファー: 8インチ (20.32 cm) ペーパーパルプ x 2
- 周波数特性: 20Hz – 32kHz ±3dB (室内平均レスポンス)
- 感度: 88dB @ 1W @ 1m @ 1kHz
- 公称インピーダンス: 4Ω / 最小 2.36Ω @ 82Hz
- 推奨最小アンプ出力: 25W/チャンネル
- 寸法 (スパイク含まず): 高さ 114.48 cm x 幅 36.83 cm x 奥行 60.78 cm
- 重量 (本体のみ): 111.13 kg/本
- 出典:(https://www.wilsonaudio.com/products/sasha/sasha-v/specs)
1. 時間軸の簡潔な歴史:ウィルソン・オーディオの旅路
Wilson Audioの物語を理解するには、創業者である故デイヴィッド・A・ウィルソンという一人の人物の情熱に触れなければならない。彼は単なるスピーカー設計者ではなかった。プロのレコーディングエンジニアであり、かつてはオーディオ専門誌『The Absolute Sound』のライターでもあった 35。彼の探求心の根源にあったのは、録音された音楽を、あたかもその場で演奏されているかのように正確に再現することへの執念だった。
その哲学が最初に結晶化したのが、1981年に発表された伝説的な「WAMM (Wilson Audio Modular Monitor)」である。モジュール構造を採用し、各ドライバーユニットを物理的に前後させることで、リスニングポジションにおける各ユニットからの音の到達時間を完璧に一致させる「タイムアライメント(時間整合)」という概念を、ハイエンドオーディオの世界に確立したのだ 35。この「タイミングこそがすべて (Timing is everything)」15という思想は、今日に至るまでWilson Audioのすべての製品に貫かれる設計思想の根幹となっている。
ブランドの運命を決定づけたのは、1986年に誕生したコンパクトモニター「WATT (Wilson Audio Tiny Tot)」だった。元々はデイヴィッドが自身のレコーディング現場に持ち込むためのポータブルモニターとして開発されたもので、市販するつもりはなかったという。しかし、その驚異的なサウンドを聴いた人々からの熱烈な要望と、何より彼の妻であり共同創業者でもあるシェリル・リー・ウィルソンの後押しによって製品化され、そのサイズからは想像もつかない価格にもかかわらず、世界的なベストセラーとなった 35。
そして1989年、WATTの能力を最大限に引き出すための専用ウーファーモジュール「Puppy」が登場し、「WATT/Puppy」システムが完成する。この「コンパクトモニター+ウーファーモジュール」という2ボックス構成は、その後数十年にわたりWilson Audioの象徴となり、数多のフォロワーを生み出した。
WATT/PuppyはSystem 8まで進化を続けた後、2009年に「Sasha W/P」として生まれ変わる。これは単なるモデルチェンジではなかった。独立したモニターとウーファーという概念を捨て、一つの統合されたシステムとしてゼロから再設計されたことを意味していた。その後、Sasha Series 2 (2014年)、そして創業者デイヴィッドへの追悼を込めて名付けられたSasha DAW (2018年)へと、着実な進化を遂げてきた。そして2023年6月、その最新形であるSasha Vが発表されたのである。
この歴史を俯瞰すると、Wilson Audioの設計思想が「パスディペンデンシー(経路依存性)」の顕著な例であることがわかる。WAMMが抱えた「いかなる部屋でも時間整合を達成する」という課題がモジュール構造を生み、WATTが直面した「ポータブルで高精度なモニター」という要求が高密度なエンクロージャー素材の開発を促した。そしてWATT/Puppyが、その二つの概念を融合させた。Sasha Vが採用する独自の複合素材、調整可能なアッパーモジュール、そしてあの独特なフォルムは、単なる特徴ではなく、40年以上前に定められた設計思想の経路を忠実に辿り着いた、必然的な帰結なのである。それは、例えばアルミニウムによるエンクロージャーの剛性確保という、全く異なる問題意識から出発したMagicoのようなブランドとは、対照的な進化の物語だ。
2. 第三者レビュー集計:世界の耳が聴いた「V」の響き
我々自身の分析に深く潜る前に、まずは世界中のオーディオファイルたちがSasha Vにどのような審判を下したのか、その俯瞰図を描いてみよう。これは、個人の主観という霧を払い、議論の座標を定めるための重要な工程だ。
| メディア | 引用抜粋 (和訳+原文) | 評価点 |
|---|---|---|
| The Absolute Sound | 「Sasha Vは並外れたラウドスピーカーだ。その外観は誇りを抱かせ、技巧と戦艦のような頑丈さで造られ、何を通しても素晴らしく聴こえる。」 (“The Wilson Sasha V is an exceptional loudspeaker. Its looks inspire pride; it’s built with a combination of finesse and battleship sturdiness; and it sounds terrific no matter what you play through it.”) | ★★★★★ |
| Stereophile | 「Sasha Vで施された変更は、主に内部にある…新しいSasha Vの公表スペックは、不変と変化の混在を反映している。」 (“The changes made… are mainly on the inside… Published specifications for the new Sasha V reflect a mix of constancy and change.”) | ★★★★★ (Product of the Year 2024) |
| SoundStage! Australia | 「Sasha VはWilson Audioの精神を非常によく捉えている…それが提供する性能は、その価格帯が示唆するものを遥かに上回っている。」 (“The Sasha V captures the spirit of Wilson Audio so very well… the performance it delivers is well above what its price point might suggest.”) | ★★★★★ (Product of the Year 2023) |
| The Audio Beat | 「ダイナミズムはSasha Vのサウンドの hallmarks の一つだ…新しい銅箔コンデンサ、改良された素材、新しいV-wire、あるいは3つの革新全ての組み合わせの結果かは言えない。」 (“Dynamism is one of the hallmarks of the Sasha V’s sound. Whether it’s a result of the new copper-foil capacitors, improved materials, the new V-wire or a combination of all three innovations, I can’t say.”) | ★★★★★ |
| Hi-Fi News | 「この最新のWilsonは蒸発するかのようで、音だけを残し、その発生源に関する手がかりを何も与えない。」 (“Because these latest Wilsons seem to evaporate, leaving only the sound and no clues as to their points of origin…”) | ★★★★★ (Highly Commended) |
| AudioScienceReview Forum | 「Piegaは今やショーで最高にクールなサウンドだ。なぜなら今年はWilson Audio Sasha V(65,000ユーロ)があり、キャビネットの色付けが全くなく、素晴らしい周波数バランスで私を言葉を失わせたからだ。」 (“Piega is now the best, coolest sound of the show, because this year the Wilson Audio Sasha V (EUR 65,000), which makes me speechless because of the absence of any cabinet coloration and wonderfull frequency balance.”) | (User Impression) |
集計とバイアスチェック
レビューの総意は、驚くほど肯定的だ。複数のメディアで「Product of the Year」を獲得している事実は、その性能が単なる好みを超えた普遍的なレベルに達していることを示唆している 13。共通して語られるのは、前作DAWからの飛躍的な進化、特に「より黒い(静かな)背景」、爆発的なダイナミクス、そしてより自然で洗練された音色だ。
もちろん、これらのレビューには一定のバイアスが内在することも見逃してはならない。専門誌のレビューは、メーカーや代理店による完璧なセッティングのもとで行われることが多く、いわば「ベストケースシナリオ」を提示している 14。しかし、Stereophile誌のように詳細な測定データが伴う場合、その主観的な評価は客観的な裏付けを得て信頼性を増す。一方で、ASRのようなフォーラムの投稿は、よりフィルターのかかっていないユーザーの声だが、試聴環境がコントロールされていないという限界もある。
それでもなお、これだけ多くのソースから一貫して高い評価が寄せられているという事実は重い。「V」へのアップデートが、単なる化粧直しではなく、パフォーマンスの次元を一つ引き上げるほどの根源的な変化であったことは、もはや疑いようがないだろう。
3. Vの解剖学:フラッグシップから滴り落ちた技術の粋
Sasha Vを理解する鍵は、Wilson Audioが言うところの「蒸留された進化 (distilled evolution)」というコンセプトにある 3。これは、天文学的な開発費が投じられたフラッグシップモデルの研究開発の成果を、より手の届きやすい(とはいえ依然として高価だが)モデルに落とし込むという戦略だ。Sasha Vの「V」は、単なる記号ではない。それは、振動を根絶やしにせんとするWilsonの執念が生み出した、新たな設計思想そのものなのだ。
Material DNA: 振動を殺すためのカクテルレシピ
Wilsonのエンクロージャー設計は、単一の素材に頼るモノリシックな思想とは一線を画す。適材適所の思想に基づき、特性の異なる複数の独自開発複合素材を組み合わせる「カクテルアプローチ」こそが、その真骨頂だ。
- X-Material: 高密度で極めて剛性の高いフェノール樹脂複合材。主にウーファーエンクロージャーの構造体や内部補強に用いられ、構造的な安定性を担う 1。Sasha Vでは、ウーファー側壁の厚みがDAW比で25%増しており、さらなる高剛性化と耐共振性を実現している 15。
- S-Material: X-Materialとは異なる特性を持つ複合材で、中域ドライバーのバッフルに最適化されている。中音域における特有のダンピング特性により、後述するQuadraMagドライバーに理想的な低共振の土台を提供する 15。
- V-Material: そして、今回の主役だ。他の追随を許さない卓越した拘束層ダンピング特性を持つ独自開発素材 17。Sasha Vでは、ミッド/ツイーターを収めるアッパーモジュールと、ウーファーキャビネットとの間の、振動伝達における最重要インターフェースに戦略的に配置されている 19。これにより、ウーファーが発する強大な振動エネルギーから、繊細な中高域ユニットを物理的にアイソレートする。多くのレビュアーが報告する「漆黒の背景」の最大の立役者が、このV-Materialであることは間違いない。
The Driver Trinity: 音の源泉を司る三位一体
- CSC (Convergent Synergy Carbon) Tweeter: 1インチのドープ処理されたシルクドームの背面に、自社で3Dプリントされた複雑な構造のカーボンファイバー製バックチャンバーを組み合わせたツイーター 8。この設計により、高域特性を32kHzまで伸ばしながらも、一部の硬質ドームツイーターにありがちな硬さや鋭さを排し、滑らかでリニアなレスポンスを実現している 20。
- AlNiCo QuadraMag Midrange: フラッグシップXVXから受け継がれた7インチのペーパーパルプ複合材ミッドレンジ。その名の通り、アルミニウム、ニッケル、コバルトから成るアルニコマグネットを採用している。アルニコは、人間の耳が最も敏感な中音域において、その豊かで自然な音色で高く評価されており、Sasha Vの音楽的で情感豊かな表現力に大きく貢献している 15。
- Woofers: 実績のある8インチのペーパーパルプ・ウーファーを2基搭載。これは前作Sasha DAWから引き継がれたもので、Sasha Vの強力な低域の土台を形成する 2。
The Unseen Heroes: 縁の下の力持ちたち
- Acoustic Diodes: これは単なるスパイクではない。ステンレス鋼とV-Materialで構成された先進的なフットシステムであり、エネルギーの「一方通行路」として機能するよう設計されている 23。キャビネットの振動を床へと効率的に逃がす一方で、床から伝わる不要な振動がスピーカーに侵入するのを防ぐ。これにより、さらなる透明度とマイクロダイナミクスの向上が図られる。かつてはオプション扱いだったこのパーツが、Sasha Vでは標準装備となった 2。
- Crossover & Capacitors: クロスオーバーには、Wilsonが自社内で製造する新型のAudioCapX-WA銅箔コンデンサが初めて採用された 19。製造を内製化することで、極めて厳しい公差管理が可能となり、この新しい銅箔バージョンは高域の微細なディテールと低レベルの解像度を劇的に向上させたと謳われている 2。
これらの技術的な選択は、偶然の産物ではない。CSCトゥイーターによる高解像度な高域、そして自社製コンデンサによる低ノイズなクロスオーバーというハイテクな要素で、アルニコ・ミッドレンジが持つオーガニックで音楽的なキャラクターをサンドイッチする。これは、Sasha Vのサウンドが、単なる分析的な忠実度ではなく、レビュアーたちが「巧みに調整されたヴォイシング (artfully calibrated voicing)」と表現する、意図的に設計された音楽的リアリティを目指していることの証左である。
競合スペック比較表
Sasha Vの立ち位置を明確にするため、同価格帯の主要なライバルたちと比較してみよう。各社の設計思想の違いが浮き彫りになるはずだ。
| 特徴 | Wilson Audio Sasha V | Magico S3 MkIII | Rockport Atria II | YG Acoustics Hailey 2.2 |
|---|---|---|---|---|
| 価格 (USD) | ~$48,900+ | ~$45,500+ | ~$27,500 | ~$50,000+ |
| 形式 | 3ウェイ・バスレフ型 | 3ウェイ・密閉型 | 3ウェイ・バスレフ型 | 3ウェイ・密閉型 |
| エンクロージャー | 独自複合材 (X, S, V-Material) | CNC加工アルミニウム | 拘束層ダンピング複合材 | CNC加工航空機グレードアルミ |
| ツイーター | 1インチ シルクドーム (CSC) | 1.1インチ ダイヤモンドコート・ベリリウム | 1インチ ベリリウムドーム | 1インチ ハイブリッド (BilletDome) |
| ミッドレンジ | 7インチ ペーパーパルプ (AlNiCo) | 5インチ グラフェン・ナノテック | 6インチ カーボンファイバー | 7.25インチ アルミニウム (BilletCore) |
| ウーファー | 2 x 8インチ ペーパーパルプ | 2 x 9インチ グラフェン・ナノテック | 1 x 9インチ カーボンファイバー | 1 x 10.25インチ アルミニウム (BilletCore) |
| 設計思想 | 体系的振動制御、タイムアライメント | 究極の筐体慣性、素材純度 | 先進複合材、低回折 | 精密機械加工、ハイブリッドドライバー |
| 出典 | 5 | 25 | 27 | 29 |
$50,000前後の価格帯は、ハイエンドスピーカー市場における最も熾烈な戦場の一つだ。Sasha Vが君臨する「複合素材・時間調整」学派の牙城に対し、各社は全く異なる哲学で挑戦状を叩きつけている。
- Magico S3 Mk III ($45,500): Wilsonのアンチテーゼ。密閉型のアルミニウム・モノコックエンクロージャーに、ダイヤモンドコート・ベリリウムトゥイーターとグラフェンコーンドライバーを搭載。そのサウンドは、冷徹なまでにニュートラル、トランスペアレント、そしてハイスピードと評される。フォーラムでは、Wilsonとは「全く別の生き物」であり、聴き手の好みやシステムによって「より忠実」とも「無機質」とも受け取られる、という意見で一致している 36。
- Rockport Technologies Atria II ($38,000): 哲学的な中間地点。Wilsonと同様の、拘束層ダンピングを用いた3層ラミネート構造の複合材エンクロージャーを採用しつつ、ドライバーにはベリリウムトゥイーターとカーボンファイバー・サンドイッチウーファーを組み合わせる。そのサウンドは、一聴するとやや「ダーク」あるいは「控えめ」に感じられるが、聴き込むほどに途方もない解像度とリアリズムを明らかにする、とレビューされている 38。価格を考慮すると、極めて強力なバリュープロポジションを持つ。
- YG Acoustics Hailey 2.2 (約$46,800): アルミ加工の求道者。エンクロージャーからドライバーのコーンに至るまで、航空機グレードのアルミブロックからの削り出し(「BilletCore」)で製造される 29。そのサウンドは「絶対的な透明性」と「第一級の均質性」を誇るが、時に「退屈」あるいは「臨床的に完璧すぎる」と評されることもある。
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4. メスで切り開く客観性:測定データが語るSasha Vの素顔
主観的なインプレッションはオーディオレビューの華だが、その根拠は客観的な事実に支えられていなければならない。ここでは、業界の権威であるStereophile誌のJohn Atkinson氏による測定データを紐解き、Sasha Vの電気的・音響的な素性を白日の下に晒そう 31。
アンプへの挑戦状:インピーダンスとEPDR
- データ: 公称インピーダンスは4Ωだが、83Hzで2.135Ωという厳しい値まで落ち込む。さらに深刻なのはEPDR(実効インピーダンス)で、107Hzから121Hzの間では1.5Ωを下回る 31。
- 考察: はっきり言って、これはアンプにとって「鬼」のような負荷だ。低インピーダンスまで安定して大電流を供給できる、駆動力の塊のようなアンプが必須となる。並の真空管アンプや廉価なソリッドステートアンプでは、このスピーカーの真価を引き出すことは不可能だろう。アンプ選びはもはや好みの問題ではなく、性能を発揮させるための「前提条件」なのだ。
この測定値は、単なる技術データ以上のことを我々に教えてくれる。Wilson Audioは、この仕様が市場の多くのアンプを「門前払い」にすることを知っているはずだ。つまり彼らは、意図的にターゲットを絞っているのである。このスピーカーの顧客は、すでにD’AgostinoやBoulderといったハイカレントな弩級アンプを所有しているか、あるいはそれを購入する覚悟のある層だ。このインピーダンスカーブは、製品を取り巻くエコシステムを能動的に形成し、そのハイエンドとしての地位を補強する、一種のマーケット・ポジショニング戦略とさえ言える。これは欠点ではなく、ターゲット顧客にとってはむしろ望ましい「仕様」なのだ。
音響性能:科学が証明する「V」の効果
- エンクロージャー共振: 測定結果は、Wilsonの素材科学の有効性を雄弁に物語る。ウーファーキャビネットは「驚くほど不活性」と評価されている。アッパーモジュールには300Hzと551Hzに微小な共振モードが見られるが、レベルが極めて低く、Q値が高いため(=共振がシャープで帯域が狭い)、聴感上の影響は無視できるレベルだ。Atkinson氏は、すでに優秀だったSasha DAWよりもさらに挙動が改善されていると指摘している 。これは、「V」哲学の主張を客観的に裏付けるデータだ。
- 周波数特性: 全体的なバランスは非常にフラット。低域は、ブーミーな量感よりも「解像度 (definition)」を重視したチューニングで、ポートの共振周波数は25Hzと低い。これにより、一般的な部屋のルームゲインと相まって、20Hzまでの伸びやかでタイトな低音再生が期待できる 。
- 指向性: 水平方向の指向性は広く均一で、安定した広大なステレオイメージングを予測させる 。一方で垂直方向の指向性はややシビアであり、リスニングポジションの高さと正確なタイムアライメント調整の重要性を再確認させるものだ。
- ステップ応答: ツイーター、ミッド、ウーファーの各ユニットからの音が時間的に極めて整合性のとれた形でリスナーに届くことを示しており、Wilsonの設計哲学の根幹であるタイムドメインの正確さが見事に達成されている 。
引用: 31
5. 魂の試聴:データを超え、音楽が立ち昇る瞬間
技術的な骨格と客観的な肉付けが完了した今、いよいよこのスピーカーに魂を吹き込む時が来た。これらの要素が、音楽という名の生命をどのように奏でるのか、その耳で確かめよう。
世界のレビュアーが聴いた声
| レビュアー / 媒体 | 引用抜粋 (和訳+原文) |
|---|---|
| Alan Taffel / The Absolute Sound | 「高域は伸びやかで洗練されており、決してシャープでもエッジが効いてもいない。中域は豊かで解像度が高く、低域は驚くほど深く、パンチがあり、旋律的だ。」 (“The highs are extended, refined, and never sharp or edgy. The mids are rich and richly resolved, while bass is astonishingly deep, punchy, and tuneful.”) |
| Vance H. / The Audio Beat | 「Sasha Vが伝える爆発的な音楽パッセージの全力とインパクトは、私とゲストを絶えず驚かせた。」 (“The Sasha V’s ability to convey the full force and impact of explosive musical passages constantly startled me and my guests.”) |
| Ken Kessler / Hi-Fi News | 「Sasha Vがシステムにできる空間の再現性を再定義した方法だった…壁が消える印象を与えた。」 (“Rather, it was the way the Sasha V redefined what a system can do for the recreation of space… gave the impression of the walls disappearing.”) |
| Edgar Kramer / SoundStage! Australia | 「それは『真実を語る』という点でハイグレードなスタジオモニターに近づきつつも、それに『健康的な人間性』を加えている。」 (“It approaches a high-grade studio monitor in its ‘truth telling’ but then adds a ‘healthy dose of humanity’ to it.”) |
Sasha Vの真価を問うには、まず儀式が必要だ。それは「プロパゲーション・ディレイ・アジャストメント(伝播遅延調整)」と呼ばれる、精密なセットアップ作業である 2。Sasha Vは、Wilsonのフロアスタンディング・ラインナップにおいて、この調整機能を備えた最も身近なモデルだ。リスニングポジションまでの距離と、耳の高さという二つのパラメーターに基づき、付属のマニュアルを参照しながらアッパーモジュールの傾き(レイクアングル)と前後位置をミクロン単位で調整する 2。あるレビュアーは、この設定をたった1クリック、ほんの数ミリずらしただけで、それまで構築されていた魔法のようなサウンドステージが跡形もなく崩壊したと報告している。これは「置けば鳴る」スピーカーではない。オーナーの情熱とスキルに応えてくれる、精密測定器なのだ。
一度そのスイートスポットが決まると、Sasha Vは驚くべきパフォーマンスを発揮する。複数のレビューで共通して絶賛されているのは、スピーカーがその存在を完全に消し去る「グレート・ディサピアリング・アクト(華麗なる消失マジック)」だ 1。音はスピーカーからではなく、部屋の空間そのものから湧き出てくるかのように、ホログラフィックで三次元的なサウンドステージを構築する。スイートスポットでの定位は「ファンタスティック」の一言に尽きる 3。
その音色、すなわち「ヴォイシング」は、厳密な意味でニュートラルではない。The Absolute Sound誌の分析によれば、わずかな低域の盛り上がりと、2-4kHz付近の巧みなディップ(いわゆる「Gundry dip」)によって、巧みに調整された暖かみと豊かさが与えられているという 37。これにより、録音の粗を過度に強調することなく、音楽のディテールを余すところなく引き出す。高域は伸びやかでありながら決して刺さることがなく、中域は豊潤かつ高解像度、そして低域は深く、パンチがあり、そして何より「音楽的(tuneful)」だ。
ダイナミクス表現は、まさに「巨大(huge)」。Radioheadの「Reckoner」のような楽曲の爆発的なトランジェントも、全く混濁することなく、一つ一つの打楽器音を時間軸上の正しい位置に寸分違わず定位させる。これは、エンクロージャーのエネルギー蓄積が極めて少なく、位相特性が優れていることの証明に他ならない。
音楽ジャンル別分析
これらのインプレッションを総合し、技術的背景と結びつけながら、各ジャンルでのSasha Vの振る舞いを描写する。
- クラシック: V-Materialがもたらす静寂な背景と、大電流アンプが引き出す爆発的なダイナミクスの組み合わせは、大編成のオーケストラでこそ真価を発揮する。漆黒のキャンバスに、弦楽器のテクスチャーや木管楽器の倍音が繊細に浮かび上がり、強大なクレッシェンドでも一切の混濁やコンプレッションを感じさせない 3。空間情報の再現能力も圧巻で、コンサートホールの広がりと奥行きをリアルに描き出す 32。
- ジャズ: 測定データが予測した通り、スピードと解像度に優れた低域は、ウッドベースのラインをリズミカルでメロディアスに躍動させる。QuadraMagミッドレンジの自然な音色は、サックスのリードの震えやヴォーカルの息遣いをリアルに再現し、「鋭さのないバイト感」を描き出す 3。CSCツイーターの洗練された表現力は、シンバルの繊細な煌めきを、金属的な響きを伴わずに空気中へと溶け込ませる。
- ロック/エレクトロニック: このスピーカーのダイナミックな本領が最も発揮されるジャンルだ。キックドラムは内臓を揺さぶるインパクトを持ち、シンセベースは部屋の空気をパワフルに震わせる 14。しかし、その圧倒的なパワーにもかかわらず、サウンドが飽和したり混濁したりすることは決してない。これは、低歪みなドライバーユニットと、共振を徹底的に抑え込んだエンクロージャーの賜物だろう。「ドライヴ感があり、感染力が強い」と評されるリズムの再現性は 3、あのアンプを泣かせるインピーダンス特性が、強力なアンプから瞬時に電流を引き出すことで実現されているのだ。
6. 部屋の中の象:フォーラムの噂と「ハウスサウンド」
プロのレビューが描き出す理想的な姿とは別に、製品の真の評価は、日々それを使いこなすオーナーたちの声にこそ見出せるものだ。オンラインフォーラムを覗いてみると、Sasha V、ひいてはWilson Audioの「ハウスサウンド」に対する、熱狂と冷静な批判が渦巻いている。
信奉者たちの声 (AudioShark, Reddit)
オーナーが集うスレッドは、概して高い満足度で満ちている。彼らの声から浮かび上がるのは、いくつかの共通認識だ。
第一に、そのサウンドは驚異的な透明度、広大なサウンドステージ、そして(過度な色付けがないという意味での)ニュートラルさを兼ね備えていると評価されている 39。
第二に、そのポテンシャルを100%引き出すためには、ミリ単位の精密なセッティングと、スピーカーを完全にグリップできるパワフルでハイスピードなアンプが「交渉の余地なく」必須であるということ。オーディオショーや販売店での凡庸なデモンストレーションは、ほぼ例外なくセッティング不足が原因だと彼らは考えている 39。
しかし、中にはSashaのような「比較的小型」のモデルは、Alexia V以上の大型機や、あるいはホーンスピーカーなどと比較すると、どこか「内向的(introverted)」で、音楽が持つ生々しい「プレゼンス」に欠けると感じる、経験豊富なユーザーからの冷静な指摘も見られる 40。これは、メーカー提供サンプルによる提灯記事ではなく、長年の愛用者ならではの、重みのある批評だろう。
懐疑論者たちの視点 (AudioScienceReview)
一方、測定データを絶対的な指標とするAudioScienceReviewのようなコミュニティでは、 predictably、その評価は手厳しい 41。
高価な価格設定、複雑で回折の温床となりかねないエンクロージャー形状(「醜い」とまで評される)、そして独立した測定データが不足している点が批判の的となる 41。
特に、Wilsonが誇るタイムアライメント機構は、優れた機能ではなく、「お粗末な設計に起因する気難しい問題を解決するための松葉杖」とまで酷評されている 42。これは測定至上主義というバイアスがかかった意見ではあるが、技術的に筋の通った反論でもある。
しかし、そんな彼らでさえ、Wilsonスピーカーが持つ一つの際立った特徴は認めている。それは、理屈抜きに「胸に響く、パンチのある低音」だ 41。
ウィルソン・パラドックスの解明
この信奉者と懐疑論者の間の絶望的な断絶は、Wilson Audioというブランドが抱える根源的なパラドックスを浮き彫りにする。すなわち、「主観的な音響体験の最大化」と「客観的な測定データの純粋性」という、二つの異なるゴールである。
Wilsonのエンジニアリングは、ホログラフィックな音像定位、胸を打つダイナミクス、そして音楽への感情移入といった、「主観的に素晴らしい」結果を生み出すことに特化している。そのために、複雑な複合材エンクロージャー、リスナー一人に最適化されたタイムアライメント、アルニコのような伝統的な素材といった、測定至上主義者から見れば「非理想的」な手段を厭わない。彼らのゴールは、教科書通りのフラットな周波数特性カーブを描くことではなく、特定のリスニングポイントにいる一人の聴き手のために、現実と見紛うほどの強力な音響的イリュージョンを構築することなのだ。これは、広いエリアで均一な特性を目指す設計思想とは異なる、もう一つの正当なエンジニアリング哲学である。Sasha Vの購入を検討する者は、自分がどちらの哲学を信奉するのかを問われることになる。
7. 価値の天秤:Sasha Vの総合評価
製品の価値は、絶対的な性能だけで決まるものではない。その価格と、市場における立ち位置とのバランスによって判断されるべきだ。ここでは5つの評価軸で、Sasha Vの総合的な価値を判定する。
| 評価軸 | 採点 (5点満点) | 解説 |
|---|---|---|
| 技術性能 | ★★★★★ | フラッグシップから継承した素材科学、ドライバー技術、振動対策はクラス最高レベル。特にV-Materialを核とした体系的な制振アプローチは画期的だ。ただし、その性能を100%引き出すには、アンプに莫大な投資を要求する 2。 |
| 音楽的魅力 | ★★★★★ | 技術的な正確さと音楽的な情熱を見事に両立させている。驚異的なダイナミクスと静寂な背景が生むコントラストは、音楽への没入感を極限まで高める。分析的にならず、純粋に音楽を楽しませる稀有な能力を持つ 3。 |
| ビルドクオリティ | ★★★★★ | 自動車グレードの塗装、完璧な工作精度、堅牢な構造は、価格を正当化する所有欲を満たす。Wilsonの製品は数十年にわたる使用を前提としており、その作りは「戦艦のよう」と評される 3。 |
| 価格対価値 | ★★★★☆ | 絶対額は極めて高い。しかし、154,000超のAlexx Vの技術的DNAをこの価格帯で実現している点を考慮すると、Wilsonのラインナップ内では相対的に高い価値を持つ 21。競合との比較でも性能はトップクラスだ。 |
| 将来性 / 修理性 | ★★★★★ | Wilsonは長期サポートとアップグレードパスで定評がある。モジュール構造と、アクセスしやすい抵抗器 15 はメンテナンス性を高めている。リセールバリューもハイエンド市場では安定している傾向にある。 |
8. ハイエンドの羅針盤:Sasha Vが指し示す現在地と未来
Sasha Vは、単体の製品としてだけでなく、現代ハイエンドオーディオ市場の縮図としても非常に興味深い存在だ。
ハイエンドオーディオのトリクルダウン経済学
Sasha Vは、現代のハイエンドオーディオにおけるビジネスモデルの完璧なケーススタディである。WAMMやXVXのような「月面着陸計画」に等しいプロジェクトで開発された最先端技術は、その中核を「蒸留」する形で、より安価な(しかし依然として高価な)モデルへと展開される 3。これにより、開発コストを回収しつつ、ブランド全体の技術的優位性を確立する。Sasha Vは、Wilson Audioのベストセラーラインに「V」の哲学をもたらし、フラッグシップ級のパフォーマンスをより広い層に届けるという明確な使命を持って生まれてきたのだ 34。
Wilsonサウンドの進化:革命ではなく、深化
その血統は、オリジナルのWATT/Puppyにまで遡る 4。タイムアライメントを重視したコンパクトなフルレンジシステムという基本概念は不変だが、その実現手段は劇的に進化した。かつて爆発的なダイナミクスで名を馳せた「ハウスサウンド」は、より静かになったエンクロージャーと先進的なドライバーユニットを得て、パワーと洗練、ニュアンスと音楽的な誠実さを両立させる、より成熟した次元へと深化を遂げた。
音質の長所と短所(競合比較)
- 長所:
- ダイナミック・コントラスト: おそらくクラス最高レベル。静寂から轟音までを瞬時に、そして軽々と行き来する能力はWilsonの真骨頂であり、Sasha Vはそれをさらに高いレベルに引き上げた 3。これが、音楽に生命感と興奮をもたらす最大の要因だ。
- エモーショナルな訴求力: AlNiCoミッドレンジが持つ豊かな音色と、全体を貫くダイナミックな表現力が相まって、冷徹な分析を超えた、音楽の感情的な核心に直接訴えかけるサウンドを生み出している 21。
- 低域の質感と権威: 他のスピーカーも深く沈む低音を再生するが、Sasha Vのそれは「メロディアスでパンチがある」と評される。定義を失わずに部屋の空気を支配する、権威に満ちた低域だ 3。
- 譲る点:
- 究極のニュートラリティ: 究極の筐体慣性と中立性を目指して設計されたMagico S3 MkIIIと比較すると、Sasha Vには明らかな「ハウスサウンド」を感じられるかもしれない。よりクールで分析的な「消え去る音」を好むリスナーは、Magicoに軍配を上げる可能性がある 26。
- システム依存性: 極めて厳しいインピーダンス負荷は、このスピーカーを競合製品よりもシステムに依存させる要因となっている 31。不適切なアンプとの組み合わせは、その性能を著しく損なうだろう。
- 小音量再生: 小音量でもその素晴らしさは揺るがないが、Sasha Vの真骨頂はその広大なダイナミックレンジにある。常に小さな音量でしか音楽を聴かないリスナーは、その最大の長所を活かしきれないかもしれない。
9. 結論:この音は、誰のために鳴るのか
おすすめしたい人 / やめた方が良い人
- このスピーカーを手にすべきは、あなただ:
- 分析的な中立性よりも、音楽のダイナミズムと感情的な繋がりを最優先するオーディオファイル。
- 中〜大規模のリスニングルームを持ち、このスピーカーを歌わせるために必要なハイカレント・アンプへの投資を厭わない情熱家。
- 旧世代のSashaやWATT/Puppyからのアップグレードを検討しているWilsonオーナー。「V」がもたらす進化は、投資に見合うだけの価値がある。
- このスピーカーは、あなたのためではないかもしれない:
- アンプにかけられる予算が限られている人。このスピーカーの価格は、さらに高価なシステムへの「入場料」に過ぎない。
- 密閉型ならではの低域や、よりクールで分析的なサウンドを好む人(YG AcousticsやMagicoがより良い選択肢となるだろう)。
- 小規模な部屋で、十分な音響処理なしにこのパワフルな低域をコントロールすることに苦労するであろう人。
総合評価(★×5)
★★★★☆ (4.5/5)
総評
Wilson Audio Sasha Vは、単なるマイナーチェンジでもない。これは、Wilson Audioがフラッグシッププロジェクトで培った数十年の知見を、最も手の届きやすいフルアジャスタブル・モデルへと「蒸留」した、深遠なる洗練の結晶であり、無機質なニュートラルさよりもホログラフィックな音場と感情的な一体感を優先する。
それは要求の厳しい楽器であり、適切に設置・駆動された時、真に魔法のような没入感のあるリスニング体験をもたらす。
「ウィルソン・ウェイ」を信奉する者にとって、Sasha Vは紛れもない成功作だ。それは、深く没入でき、感情を揺さぶり、ダイナミックなスリルに満ちた音楽体験を提供する。スペックシート上の競争や、測定純粋主義者との論争に勝利することはないかもしれない。しかし、リスニングルームに信憑性の高い音響的イリュージョンを構築するその能力は、間違いなく世界最高峰のレベルにある。その真の価値は、個々の部品の価格の総和ではなく、この一つのデザインへと結実した、数十年にわたる集中的かつ反復的な改良の歴史そのものにあるのだ。
音楽を再生するのではない。あなたの部屋に、パフォーマンスそのものを再構築するのだ。
引用文献
- Wilson Audio Sasha V Loudspeaker | Hi-Fi News, https://www.hifinews.com/content/wilson-audio-sasha-v-loudspeaker
- Wilson Audio Specialties Sasha V loudspeaker - Stereophile.com, https://www.stereophile.com/content/wilson-audio-specialties-sasha-v-loudspeaker
- Wilson Audio Sasha V Loudspeaker - The Absolute Sound, https://www.theabsolutesound.com/articles/wilson-audio-sasha-v-loudspeaker/
- Wilson Audio - Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Wilson_Audio
- Wilson Audio Announces Sasha V Loudspeakers - ecoustics.com, https://www.ecoustics.com/products/wilson-audio-sasha-v-loudspeakers/
- Dismayed in Sasha V?? Honest take on Sasha V vs. DAW - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=R1Yl5V4eiUw
- ウィルソン・オーディオの「SASHA V」がデビュー。「SASHA DAW」の真髄を継承し、ハイエンドモデルのために開発された技術を新搭載 - Stereo Sound ONLINE, https://online.stereosound.co.jp/_ct/17658353
- Wilson Audio Sasha V Floorstanding Speaker - Paragon Sight & Sound, https://www.paragonsns.com/products/wilson-audio-sasha-v-floorstanding-speaker
- 【Wilson Audio】新たなスピーカーシステム 「SASHA V」 受注開始のご案内 - stella Inc, https://stella-inc.com/stellawebsite/2023/11/15/%E3%80%90%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B%E3%80%91%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AAsashav/
- WILSON AUDIO : SASHA V スタンダードカラー - 新品 - オーディオユニオン, https://www.audiounion.jp/ct/detail/new/204085/
- ステラ、米国Wilson Audio製品の輸入販売代理店に決定。9月1日より取扱い開始, https://online.stereosound.co.jp/_ct/17195666
- Sasha V Technical Specifications - Wilson Audio, https://www.wilsonaudio.com/products/sasha/sasha-v/specs
- Awards - Wilson Audio - Sasha V, https://www.wilsonaudio.com/products/sasha/sasha-v/awards-reviews
- Wilson Audio Sasha V Loudspeakers - The Audio Beat - www …, https://www.theaudiobeat.com/equipment/wilson_audio_sasha_v.htm
- Wilson Audio Sasha V - INDULGR, https://indulgr.com/audiophile/news/wilson-audio-sasha-v/
- The WATT/Puppy - Wilson Audio, https://www.wilsonaudio.com/products/watt-puppy/the-watt-puppy
- Demonstrating Wilson’s V Material against Competition - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=XifLqzk1IzQ
- Wilson Audio Specialties Alexia V Loudspeaker - The Absolute Sound, https://www.theabsolutesound.com/articles/wilson-audio-specialties-alexia-v-loudspeaker/
- Sasha V - Wilson Audio, https://www.wilsonaudio.com/products/sasha/sasha-v
- Wilson Audio Sasha V (Please Contact) | Audio Excellence Canada, https://www.audioexcellence.ca/products/wilson-audio-sasha-v-please-contact
- Wilson Audio Sasha V Loudspeakers - SoundStageAustralia.com, https://www.soundstageaustralia.com/index.php/reviews/804-wilson-audio-sasha-v-loudspeakers
- Wilson Audio: WATT/Puppy - Audio Element: HiFi Experts, Turntables, Speakers and More, https://audio-element.com/wattpuppy/
- The Wilson Audio Acoustic Diode, https://www.wilsonaudio.com/videos/video-the-wilson-audio-acoustic-diode
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- Any Wilson owners out there? What model and how long have you been using them? Impressions : r/audiophile - Reddit, https://www.reddit.com/r/audiophile/comments/1kjd14v/any_wilson_owners_out_there_what_model_and_how/
- What’s next after Sasha’s ??? A new endeavor | AudioShark Forums, https://www.audioshark.org/threads/whats-next-after-sashas-a-new-endeavor.7192/
- Wilson Audio Speakers: Why do people like them? | Audio Science Review (ASR) Forum, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/wilson-audio-speakers-why-do-people-like-them.61897/
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