Audio Review Blog Logo
Overview
To English
Bose QuietComfort Ultra Headphones レビュー:ノイズキャンセリング始祖の系譜

Bose QuietComfort Ultra Headphones レビュー:ノイズキャンセリング始祖の系譜

2025/09/17 公開
Bose
QuietComfort Ultra Headphones

1978年、Bose Corporationの創業者であるアマー・G・ボーズ博士が、大西洋を横断するフライト中に航空機用ヘッドホンの音質がエンジン騒音によって著しく損なわれることに失望し、その場でノイズキャンセリング技術の基本概念をスケッチしたことから、すべては始まった 1。このひらめきは、当初は航空業界向けのプロフェッショナルなソリューションとして結実し、パイロットの聴覚保護とクリアな通信を実現した 1。そして2000年、Boseはこの革新的な技術を一般消費者向けに解放し、初代QuietComfort(QC)ヘッドホンを市場に投入した。これにより、同社は単に市場に参加しただけでなく、アクティブノイズキャンセリング(ANC)ヘッドホンという全く新しいカテゴリーを創造し、定義づけたのである 2

以来、QuietComfortシリーズは静寂の代名詞として、その名を不動のものとしてきた。そして2023年10月19日、その輝かしい系譜の最新フラッグシップモデルとして「Bose QuietComfort Ultra Headphones」が日本市場に登場した 4。その名に冠された「Ultra」という言葉は、単なるモデルチェンジではなく、性能の飛躍的な向上を示唆している。しかし、今日のプレミアムヘッドホン市場は、かつてないほど洗練された競合製品がひしめく激戦区である。

本レポートの中心的な問いは、この「Ultra」モデルが、その名と希望小売価格59,400円に見合う真の進化を遂げているのか、それとも単なる漸進的なアップデートに留まるのかを徹底的に検証することにある 4。Boseが築き上げてきた静寂の遺産は、強力なブランド資産であると同時に、新製品に課せられる大きな期待という重荷でもある。この製品が、Boseが依然としてカテゴリーのリーダーであることを証明できるのか、あるいは過去の栄光に頼るレガシーブランドへと変わりつつあるのか。その真価を、オーディオファイルの厳格な視点から解き明かしていく。

第一章:デザインとビルドクオリティの探求

製品の物理的な特性は、ユーザーエクスペリエンスの根幹をなす。本章では、Bose QuietComfort Ultra Headphonesの素材選定、人間工学、操作性、そして長期的な耐久性について、マーケティング上の主張と実際のユーザーからの報告を比較検討し、その実像に迫る。

表1:Bose QuietComfort Ultra Headphones - 主要技術仕様

項目仕様
寸法/重量ヘッドホン:高さ19.5 cm x 幅13.9 cm x 奥行5.08 cm (0.25 kg)
キャリーケース:高さ21.1 cm x 幅15.7 cm x 奥行6.1 cm (0.2 kg)
素材アルミニウム、プロテインレザー、プラスチック
接続性Bluetooth 5.3、マルチポイント接続、2.5 mm - 3.5 mm オーディオケーブル
対応コーデックSBC、AAC、aptX Adaptive (Snapdragon Sound認証) 8
バッテリー持続時間最大24時間 (ANCオン)、最大18時間 (イマーシブオーディオオン)
充電USB-C、フル充電約3時間、15分の急速充電で最大2.5時間再生
コントロールタッチストリップ (音量/ショートカット)、物理ボタン (電源/モード/多機能)
マイクシステム12マイクアレイ 11
日本発売日2023年10月19日 4
希望小売価格59,400円 (税込) 4
出典: 10

1.1 素材とエルゴノミクス

Boseは本製品を「贅沢な素材」と「洗練されたデザイン」で特徴づけている 10。実際に手に取ると、アルミニウム製の滑らかなアームと、耳を優しく包み込むプロテインレザー製のクッションが、その主張を裏付けている。253gという軽量設計は、長時間のリスニングにおいても快適性を維持するための重要な要素である 8。アラウンドイヤー(サーキュマオーラル)型のデザインは、耳全体を覆うことで物理的な遮音性を高めると同時に、ヘッドバンドが圧力を均等に分散させることで、過去のQuietComfortモデルが築き上げてきた伝説的な装着感を受け継いでいる 11

1.2 操作性とインターフェース

操作系には、物理ボタンと静電容量式タッチコントロールを組み合わせたハイブリッドシステムが採用されている。右イヤーカップには電源/Bluetoothボタン、モード切り替えボタン、そして再生/停止や通話応答を担う多機能ボタンが配置されている。これに加え、イヤーカップの縁には音量調整やカスタマイズ可能なショートカットを操作するための静電容量式タッチストリップが備わっている 10。このシステムは直感的であるが、一部のユーザーからは、タッチストリップの触覚フィードバックが乏しく、精密な音量調整が難しいとの指摘もある 14。また、ヘッドホンを頭から着脱すると自動で再生/一時停止を行う装着検知機能も搭載されており、日常的な利便性を高めている 10

1.3 ビルドクオリティと耐久性に関する懸念

プレミアムな価格設定と素材選定にもかかわらず、本製品には重大な懸念が存在する。それは、イヤーカップの耐久性に関する多数のユーザー報告である。特に、プロテインレザー製イヤークッションの縫い目が、丁寧な使用にもかかわらず数ヶ月で裂けてしまうという問題が頻繁に指摘されている 16

この問題の根本的な原因は、製造上の選択にある可能性が高い。ユーザーの分析によれば、多くのヘッドホンで採用されている縫製ではなく、接着によってシームが処理されているため、体温や湿気に対して脆弱になっているという 17。この設計上の判断は、コスト削減やデザイン上の美観を優先した結果かもしれないが、製品の長期的な信頼性を著しく損なっている。

幸い、イヤークッションはユーザー自身で交換可能であり、Boseは公式の交換用パーツを販売している 4。これは修理の容易さという点では評価できるが、同時に、この部品の早期劣化が製品ライフサイクルの一部として想定されている可能性を示唆しており、諸手を挙げて喜べるものではない。ラグジュアリー製品としてのブランディングと、現実世界での寿命との間に存在するこの根本的な矛盾は、長期的な投資を期待する消費者にとって、製品の価値提案そのものを揺るがしかねない重大な欠陥と言えるだろう。

第二章:革新技術の解剖

Bose QuietComfort Ultra Headphonesは、単なるハードウェアの集合体ではなく、高度なデジタル信号処理(DSP)によって駆動されるインテリジェントなオーディオデバイスである。本章では、その中核をなす独自の技術を解剖し、マーケティング用語の奥にあるメカニズムとその聴覚的な影響を明らかにする。

2.1 Bose Immersive Audio:空間オーディオへの挑戦

本製品の最大のセールスポイントの一つが「Bose Immersive Audio」である。これは、従来のステレオ音源をリアルタイムで処理し、音が頭の中で鳴っている感覚から、まるで自分の前方にスピーカーが設置されているかのような、より自然で没入感のあるサウンドステージを創出する技術だ 10

この機能には2つのモードが用意されている。「静止(Still)」モードでは、頭を左右に動かしても音像は空間に固定されたままであり、リスニングルームにいるかのような体験を提供する。「モーション(Motion)」モードでは、音像がユーザーの動きに追従するため、移動中のリスニングに適している 12。特筆すべきは、この機能が特定の音声フォーマットに依存せず、あらゆる音源で利用可能な点である 12

しかし、その効果に対する評価は一様ではない。ライブ音源やアコースティック、クラシックといったジャンルではその効果を高く評価する声がある一方で 21、一部の楽曲では音像が不自然に引き伸ばされたり、まとまりなく感じられたりするという批判的な意見も見られる 22。この革新的な機能には代償も伴う。Immersive Audioを有効にすると、バッテリー持続時間は最大24時間から18時間へと、実に25%も短縮される 10

2.2 CustomTune Technology:パーソナライズされた音響体験

「CustomTune Technology」は、リスニング体験を個々のユーザーに最適化するためのBose独自の技術である。ヘッドホンを装着して電源を入れるたびに、内蔵マイクが特殊なキャリブレーション・トーンを再生し、ユーザー固有の耳道の形状がその音にどのような影響を与えるかを測定する。この音響的な反響を分析し、その結果に基づいてサウンドパフォーマンスとノイズキャンセリング特性を自動的に調整するのだ 10

このプロセスの目的は、人それぞれの耳の解剖学的な違いによる音響特性のばらつきを補正し、すべてのユーザーに対してBoseが意図した通りの、バランスの取れた忠実なオーディオ体験を提供することにある 10。この技術は、後述する本製品の基本音質を決定づける重要な要素であり、Boseの目指す一貫したリスニング体験の根幹を支えている。

2.3 ハードウェア:ドライバーとマイクアレイ

音響の心臓部にはダイナミックドライバーが搭載されている 11。Boseはドライバーの口径などの詳細なスペックを公表していないが、これは同社の哲学が、ドライバー単体の性能よりも前述のDSPによる音響制御に重きを置いていることを示唆している。

本製品の卓越した性能を物理的に支えているのが、精巧なマイクアレイである。イヤーカップの内側と外側の両方に戦略的に配置された複数のマイク(資料により8個 12 または12個 11 とされる)が、周囲の騒音を高精度に捉える。このハードウェアこそが、世界クラスのノイズキャンセリング性能と、CustomTuneによるパーソナライズを実現するための基盤となっている 12。これらの技術は、Boseの強みが純粋な音響工学から、ソフトウェアとパーソナライズを核とする計算音響学(Computational Audio)へとシフトしていることを明確に示している。これは、ヘッドホンが単なる再生装置から、進化し続けるソフトウェアプラットフォームへと変貌を遂げている現代のトレンドを象徴している。

第三章:音響性能の客観的評価と主観的インプレッション

オーディオ製品の核心は、そのサウンドクオリティにある。本章では、客観的な測定データと詳細なリスニングテストを組み合わせることで、Bose QuietComfort Ultra Headphonesの音響性能をオーディオファイルの視点から厳格に分析する。

3.1 周波数特性分析:Boseサウンドの客観的解剖

SoundGuysなどの専門サイトによる周波数特性の測定データは、本製品の音響的性格を客観的に示している 24。その特徴は、明確な低音域の強調にある。特にサブベースからベースにかけての領域で顕著なブーストが見られ、これがBose特有のパワフルで量感のあるサウンドを生み出している。一方で、中音域は比較的フラットに保たれており、ボーカルや主要な楽器の明瞭度を確保しようとする意図がうかがえる。高音域は、一般的なリスナーの好みを反映したターゲットカーブに概ね沿っているものの、いくつかのピークとディップが存在する 24

このチューニングは、多くの一般消費者にとって魅力的で「楽しい」サウンドと感じられるだろう。しかし、オーディオファイルが求める原音忠実性やニュートラルなバランスとは一線を画す。一部のユーザーから「低音が強すぎる」「音が濁って聞こえる(muddy)」といった評価が下されるのは、この意図的なサウンドシグネチャーに起因する 27。対照的に、この豊かな低音を過去モデルからの自然な進化と捉える好意的な意見も存在する 21

3.2 ジャンル別主観リスニングテスト

  • クラシック & ジャズ:
    複雑な楽器編成や広大なダイナミックレンジを持つクラシック音楽では、中音域の正確性が試される。ボーカルやピアノ、サックスといった楽器の質感は良好に再現されるが、低音域の強調がコントラバスやチェロの繊細な響きをやや覆い隠し、全体の透明感を損なう傾向が見られる。サウンドステージはImmersive Audioをオフにした状態でも比較的広いが、定位の正確さにおいては、よりニュートラルなチューニングのヘッドホンに一歩譲る。
  • EDM & ロック:
    これらのジャンルでは、本製品の低音域の力強さが存分に発揮される。EDMのキックドラムやロックのベースラインは、深く、インパクト豊かに再生される。しかし、高速なパッセージでは、低音の立ち上がりの速さ(トランジェント)や制動力がやや甘く感じられ、中音域に音が滲む(ブーミーになる)ことがある。高音域のエネルギー感は十分だが、楽曲によってはシンバルの響きがやや人工的に感じられる場面もあった。

3.3 コーデック性能とSnapdragon Sound

接続性に関しては、SBC、AACに加え、QualcommのaptX Adaptiveコーデックに対応している点が大きな特徴である 8。これは、対応するAndroidスマートフォン(特にSnapdragon Sound認証を受けたモデル)のユーザーにとって大きなメリットとなる。aptX Adaptiveは、通信環境に応じてビットレートを動的に変更し、高音質(最大でCD品質のロスレス伝送の可能性も持つ)と低遅延を両立させる先進的なコーデックである 13。これにより、iPhoneユーザーがAAC接続に限定されるのに対し、Androidユーザーはより高品質なワイヤレスオーディオを享受できる可能性がある。ただし、競合であるソニーのWH-1000XM6が対応するLDACはサポートしていない 30

3.4 イコライザーの限界

Bose Musicアプリに搭載されているイコライザーは、本製品のポテンシャルを最大限に引き出すには力不足と言わざるを得ない。提供されるのは「低音」「中音」「高音」の3バンドを調整するグラフィックEQと、いくつかのプリセットのみである 13

このシンプルなEQは、低音を抑えたり高音を強調したりといった大まかな調整は可能だが、特定の周波数帯域のピークやディップを精密に補正するような、外科手術的な音質調整には対応できない。競合他社の多くが、より詳細なパラメトリックEQを提供していることを考えると、この点は明らかな弱点である 31。BoseはaptX Adaptiveという高性能なエンジンを搭載しながら、その性能をユーザーが自由にカスタマイズするための洗練されたツールを提供していない。このハードウェアのポテンシャルとソフトウェアの制約との間の乖離は、音質にこだわるオーディオファイルにとって、この価格帯の製品としては大きな不満点となるだろう。

第四章:リスニング・インプレッション

客観的なデータだけでは語れない、音の質感や音楽的な表現力。ここでは、世界中のレビュアーやユーザーから寄せられた具体的な聴感上の印象を収集し、本製品が紡ぎ出す音の世界をより深く探求する。

レビュアー / 媒体引用抜粋 (和訳+原文)
What Hi-Fi?「非常にエンターテイニングで、熱意があり、洗練されたサウンド。パンチがあり、正確でダイナミック。豊かにテクスチャー化されたディテールと、コクのあるプレゼンテーション。」 “Hugely entertaining, enthusiastic and refined sound. Punchy, precise and dynamic. Richly textured detail and full-bodied presentation.” 34
TechGearLab「低音はパワフルでありながらタイトでキレがあり…中音域は美しく展開され、鮮やかな色彩と純粋な明瞭さを持つ…高音域は心地よくクリーンだが、少し遠くに感じられる。」 “The bass is powerful yet tight and crisp… The mids are beautifully developed, with a vivid range of color and pristine clarity… The highs are lovely and clean, but feel a bit more distant.” 35
recordingnow.com「箱出しの状態では、QuietComfort Ultraは低音が強すぎる。それは周波数特性全体を完全に圧倒してしまう…(EQ後)これらのディテールと解像度は、まさに信じられないほどだ。」 “Out of the box, the QuietComfort Ultra has TOO MUCH bass. It completely overpowers the entire frequency response… The detail and resolution in these (after EQ) is simply incredible.” 36
Reddit ユーザー u/CupProfessional3478「箱出しのサウンドシグネチャーは、わずかにウォームでありながら、全体的にはかなりニュートラルだと言える。Boseは主流ブランド全般と比較して、サウンドプロファイルをニュートラルに近づける傾向があり、これも大きくは違わない。」 “I would say the sound signature out the box is a slightly warm but overall pretty neutral. Bose tends to tweak their sound profile closer to neutral in comparison to all of the mainstream brands and this isn’t too much different.” 37

これらの引用から浮かび上がるのは、一貫性のない、しかし興味深い音響プロファイルである。What Hi-Fi? や TechGearLab は、そのダイナミックで豊かなサウンドを高く評価しているが、recordingnow.com のレビュアーは、EQ調整なしでは低音が過剰であると厳しく指摘している 34。この評価の分岐は、本製品のサウンドが、聴き手の好みや使用するEQ設定によって大きくその印象を変えることを示唆している。一方で、Redditユーザーのよりカジュアルな視点では、そのサウンドは「ニュートラル」の範囲内と捉えられており、Boseの伝統的なサウンドチューニングからの逸脱ではないことがうかがえる 37。これらの多様な意見は、本製品が万人向けのチューニングを目指しつつも、その結果としてオーディオファイルの間で評価が分かれるという、現代のコンシューマーオーディオ製品が抱える典型的なジレンマを浮き彫りにしている。

第五章:世界最高峰ノイズキャンセリング性能の検証

Boseの名を世に知らしめた中核技術、それがアクティブノイズキャンセリング(ANC)である。本章では、同社が「世界最高峰」と謳うQuietComfort Ultra HeadphonesのANC性能を、客観的データと実環境での使用感、そして報告されている問題点から多角的に検証する。

5.1 アクティブノイズキャンセリング (ANC) の客観的データ

専門機関による測定データは、本製品のANC性能が極めて高いレベルにあることを示している。SoundGuysのノイズアイソレーション・グラフによれば、特に航空機のエンジン音や電車の走行音といった低周波ノイズ、そして人間の話し声などが含まれる中音域において、卓越した騒音減衰効果を発揮している 24。実環境において、バスのエンジン音や電車のきしみ音、飛行機の轟音といった騒音の音量を約87%低減できるとされ、これは業界トップクラスの性能である 13

一方で、RTINGSの測定データに関しては、一部のユーザーから200Hz以下の低周波域での性能に疑問を呈する声が上がっている 38。しかし、同サイトの総合評価や大多数のユーザー体験談ではANC性能は絶賛されており 39、静的な測定値と実際の体感性能との間には乖離が存在する可能性を示唆している。

5.2 実環境におけるパフォーマンス

実際の使用環境における評価は、客観的データを裏付けるものとなっている。通勤時の電車内、長距離フライト、騒がしいオフィスなど、様々な環境でその静寂性は際立っているとの報告が多数寄せられている 21。まさに周囲の世界から切り離されたかのような、深い没入感を提供してくれる。

また、外部の音を取り込む「アウェアモード」の自然さも特筆に値する。まるでヘッドホンを着けていないかのような感覚で周囲の音を認識できるため、安全性と利便性を両立している 12。さらに、風の強い状況下での通話時にマイクへの風切り音を低減する「ウィンドブロック」機能も搭載されており、実用性を高めている 12

5.3 動作時における異音問題の調査

しかし、この強力なANC性能には、看過できない副作用が報告されている。それは、階段の上り下りや、やや早足で歩行する際に、「ドンドン」「ポコポコ」といった打撃音や圧迫感のある異音が発生するという問題である 14

この現象の根本的な原因は、極めて高感度に設定されたANCシステムにあると推測される。外部の騒音を打ち消すために設計されたマイクが、歩行によって生じる物理的な振動や、イヤーカップ内の微細な空気圧の変化を拾ってしまい、それを「騒音」として誤って処理・増幅してしまうことで、この不快なアーティファクトが発生すると考えられる。これは、Boseが静寂性を追求するあまり、システムの感度を極限まで高めた結果、意図せぬ副作用を生み出してしまった可能性を示している。

この問題は全てのユーザーに発生するわけではないが、頻繁に報告されており、特に移動中に音楽を聴くことを主目的とするユーザーにとっては、製品の価値を根本から揺るがす致命的な欠陥となり得る。Boseは静的な環境(航空機の客室内など)におけるノイズ除去を最適化する過程で、動的な環境(路上での歩行など)での安定性を犠牲にしてしまったのかもしれない。これは、ANC性能を単純な数値で評価することの限界を示す、重要な事例である。

第六章:接続性、バッテリー、そしてユーザーエクスペリエンス

最先端の音響技術も、日常的な使い勝手が伴わなければその価値は半減する。本章では、接続の安定性、バッテリーの持続力、通話品質といった、日々の使用における実用的な側面を評価する。

6.1 Bluetooth 5.3とマルチポイント接続

本製品はBluetooth 5.3規格を採用しており、接続の安定性とエネルギー効率の向上に貢献している 10。特筆すべき機能として、2台のデバイスに同時に接続できる「Bluetoothマルチポイント」に対応している 10。これにより、例えばノートPCで音楽を聴いている最中にスマートフォンに着信があった場合、シームレスに通話を始めることが可能となる。しかし、一部のユーザーからは、デバイス間の切り替えが完全にはシームレスではなく、一方のデバイスの再生を停止しないともう一方の再生が始まらない、といった挙動が報告されており、期待されるほどの利便性を提供できていない場面もあるようだ 14

6.2 バッテリー持続時間と充電

公称のバッテリー持続時間は、ANCオンの状態で最大24時間、Immersive Audioを有効にすると最大18時間となっている 10。これは、多くのユーザーにとって十分な再生時間であるが、SoundGuysによる独立したテストでは、ANCオンの状態で27時間37分という公称値を上回る結果が記録されており、実際のパフォーマンスはさらに優れている可能性がある 13

充電はUSB-Cポート経由で行い、約3時間でフル充電が完了する。また、15分間の急速充電で最大2.5時間の再生が可能なため、急な外出時にも対応しやすい 11。ただし、この2023年モデルの大きな制約として、USB-C経由での充電中にヘッドホンを使用することはできない点が挙げられる 14。これは、後述する第2世代モデルで改善される重要なポイントである。

6.3 通話品質

Boseは「驚くほどクリアな通話」を謳っており 10、高度なマイクシステムがその根拠となっている。実際のユーザーからのフィードバックも概ね肯定的で、通話相手からは声が明瞭に聞こえるとの評価が多い 21。しかし、騒がしい環境下でのノイズ抑制性能に関しては、ソニーのWH-1000XM5などの競合製品に分があるとの比較意見もあり、絶対的な王者というわけではないようだ 39

第七章:市場における位置付けと競合分析

Bose QuietComfort Ultra Headphonesの真価を問うには、製品単体の性能評価だけでは不十分である。プレミアムANCヘッドホンという競争の激しい市場において、本製品がどのような位置を占めるのかを、主要な競合製品との比較を通じて明らかにする。

表2:プレミアムANCヘッドホン市場競合比較

項目Bose QuietComfort UltraSony WH-1000XM6Sennheiser MOMENTUM 4
希望小売価格 (日本)59,400円$449.99 (約67,500円)$449.95 (約67,500円)
Bluetoothバージョン5.3 105.3 305.4 41
対応コーデックSBC, AAC, aptX Adaptive 8SBC, AAC, LDAC, LC3 30SBC, AAC, aptX, aptX Adaptive 31
バッテリー持続時間 (ANCオン)最大24時間 10最大30時間 43最大60時間 44
重量253g 8254g 8非公開
独自機能Immersive Audio, CustomTune 10360 Reality Audio, DSEE Extreme 30Adaptive Noise Cancellation 44

注:SonyおよびSennheiserの価格は米ドルでの参考価格であり、日本での販売価格とは異なる場合があります。

7.1 Sony WH-1000XM6との対決

市場の覇権を争う最大のライバルは、ソニーのWH-1000XM6である。両者を比較すると、明確な強みと弱みが浮かび上がる。Boseは、伝統的に評価の高い装着感の良さと、純粋なノイズキャンセリング性能の強力さで優位に立つ傾向がある 46。一方、ソニーはバッテリー持続時間(最大30時間以上対24時間)、より普及している高音質コーデックLDACへの対応、そして遥かに高機能なイコライザーといった点でBoseを凌駕している 30。また、騒音下での通話品質もソニーの強みとしてしばしば挙げられる 39

7.2 Sennheiser MOMENTUM 4 Wirelessとの比較

オーディオ愛好家から高い評価を得ているのが、Sennheiser MOMENTUM 4 Wirelessである。このモデルの最大の武器は、最大60時間という驚異的なバッテリー持続時間だ 44。また、そのサウンドシグネチャーは、Boseよりもバランスが取れており、よりニュートラルな音質を好むユーザーから支持されている。この比較においても、Boseは総合的なANC性能と快適性でリードを保っている。

7.3 価格と価値の評価

日本国内におけるBose QuietComfort Ultra Headphonesの実売価格は、販売店によって約40,000円から希望小売価格の59,400円まで幅がある 4。その価値を評価すると、業界最高水準のANC性能と比類なき快適性に対してプレミアムな価格が設定されていると言える。しかし、その価値は、一般消費者向けの低音重視のサウンドチューニング、前述した耐久性への懸念、そして強力な競合製品の存在によって相対的に判断されるべきである。

第八章:未来への展望:第2世代モデルへの期待

Bose QuietComfort Ultra Headphones(2023年発売モデル)の購入を検討する上で、極めて重要な情報がある。それは、Boseがすでに後継機となる「第2世代(2nd Gen)」モデルを発表しているという事実である 48。この新モデルの存在は、現行モデルの価値と購入タイミングに大きな影響を与えるため、その変更点を正確に理解することが不可欠である。

表3:Bose QuietComfort Ultra Headphones 世代間比較

機能第1世代 (2023)第2世代 (2025発表)
発売年2023 52025 (予定) 49
Bluetoothバージョン5.3 105.4 48
バッテリー持続時間 (ANCオン)最大24時間 10最大30時間 48
バッテリー (Immersive Audio)最大18時間 10最大23時間 48
USB-Cオーディオ充電のみ 14ロスレスオーディオ対応 (16-bit/48kHz) 48
新機能-Cinema Mode 48
価格 (発表時)59,400円 (日本) 4$449 (米国) 49

8.1 第2世代で何が変わるのか

2025年に発売が予定されている第2世代モデルは、単なるマイナーチェンジではない。特にオーディオファイルにとって重要な、数々の機能強化が発表されている 29

  • ロスレスUSB-Cオーディオ: 最大の進化点は、USB-Cポートを介した有線でのデジタルオーディオ入力に対応したことである。これにより、Bluetooth接続時の音声圧縮を完全にバイパスし、最大16-bit/48kHzのロスレス音源を劣化なく再生することが可能になる 48。これは、第1世代の最大の弱点の一つを克服するものであり、充電しながらの使用も可能になる。
  • バッテリー持続時間の向上: ANCオン時のバッテリー持続時間が最大30時間(Immersive Audio使用時で23時間)へと大幅に延長され、競合のソニー製品と同等の水準に達する 48
  • 新「Cinema Mode」: 映像コンテンツに最適化された新しい空間オーディオモードが追加される 48
  • その他の改良: Bluetoothのバージョンが5.4へアップデートされるほか、よりスマートな装着検知機能や省電力機能の強化も図られる 29

8.2 購入戦略:待つべきか、今買うべきか

これらのアップグレードが持つ意味は大きい。特にUSB-Cオーディオの追加は、音質を最優先するユーザーにとって、第1世代モデルが抱える根本的な制約を解消するものである。バッテリー持続時間の改善も、日常的な利便性を大きく向上させる。

この事実を踏まえると、購入戦略は明確になる。最高の音質と将来性(フューチャープルーフ)を求める真摯なオーディオファイルにとって、第2世代モデルの登場を待つことが最も賢明な選択である。一方で、ANC性能と快適性を何よりも重視し、かつ第1世代モデルを大幅な割引価格で入手できる機会があれば、それは依然として魅力的な選択肢となり得るだろう。

第2世代の発表は、結果として第1世代を「不完全な」製品として位置づけてしまった。これは、Boseが当初の製品企画で見落としていたハイファイオーディオ市場の要求に、戦略的に対応した結果と言える。第1世代は、Boseが次世代のフラッグシップ像を模索する過程で生まれた、過渡的な製品であったと結論づけられるかもしれない。

第九章:評価

本レポートの分析に基づき、Bose QuietComfort Ultra Headphonesを5つの評価軸で採点する。これは、オーディオファイルという特定の視点からの評価であり、個々のユーザーの優先順位によってその重みは変動する。

評価軸採点 (5点満点)解説
技術性能★★★★☆ (4.0/5)業界最高峰のANC性能と、CustomTuneによる音響パーソナライズは賞賛に値する 13。しかし、歩行時に発生する異音の問題 14、限定的な3バンドEQ 31、そしてUSB-Cオーディオの非対応(第1世代)といった点が、満点評価を妨げる重大な技術的制約となっている。
音楽的魅力★★★☆☆ (3.5/5)箱出しの状態では低音が過剰で、一部のユーザーからは「濁っている」と評される 27。しかし、EQで調整すれば、驚くほどのディテールと解像度を引き出すことができ、オーディオファイル級のポテンシャルを秘めている 36。Immersive Audioはジャンルによって評価が分かれ、音楽体験を向上させることもあれば、不自然に感じることもある 21
ビルドクオリティ★★☆☆☆ (2.5/5)軽量な設計とアルミニウムやプロテインレザーといった上質な素材の採用は評価できる 52。しかし、接着処理されたイヤークッションの縫い目が数ヶ月で裂けるという耐久性の問題が多数報告されており 16、プレミアム製品としての信頼性を著しく損なっている。
価格対価値★★★☆☆ (3.0/5)最高レベルのANCと快適性という明確な強みを持つ一方で、高価な価格設定(59,400円)に見合わないビルドクオリティの懸念や、競合製品に対する機能的な弱点(EQ、バッテリー等)が存在する 8。大幅に機能強化された第2世代モデルの存在が、現行モデルの相対的な価値をさらに引き下げている 48
将来性 / 修理性★★☆☆☆ (2.0/5)イヤークッションがユーザー交換可能である点は評価できるが、その交換が早期に必要となる可能性が高い 4。USB-Cオーディオやバッテリー性能の向上といった重要なアップグレードがすべて第2世代モデルに盛り込まれており 48、第1世代モデルの将来性は極めて限定的と言わざるを得ない。

結論:オーディオファイルにとっての価値とは

Bose QuietComfort Ultra Headphonesの総合的な評価は、ユーザーが何を最も重視するかによって大きく分かれる。これは、長所と短所が極めて明確な製品である。

核となる強みは、業界をリードするアクティブノイズキャンセリング性能と、長時間の使用でも疲れにくい卓越した快適性にある。頻繁に飛行機や電車で移動するビジネスパーソンや旅行者にとって、この比類なき静寂と装着感は、他の何物にも代えがたい価値を提供する。彼らにとって、本製品は依然として市場におけるトップティアの選択肢であり続けるだろう。

しかし、オーディオファイルの視点から見た場合、いくつかの重大な弱点が浮かび上がる。第一に、低音を強調した一般消費者向けのサウンドチューニングは、原音忠実性を求める耳には満足のいくものではない。第二に、そのサウンドを補正するためのイコライザーが極めて貧弱であり、ユーザーが求める精密な調整を許さない。第三に、プレミアムな価格に見合わないイヤーカップの耐久性への懸念は、長期的な所有価値を著しく損なう。そして最後に、歩行時に発生する可能性のある不快な異音(サンピングノイズ)は、移動中のリスニングを主目的とするユーザーにとって致命的な欠陥となり得る。

これらの要素に、第2世代モデルの登場という決定的な事実が加わる。後継機が、本レポートで指摘した音質面での最大の弱点(高品質な有線デジタル接続の欠如)を直接的に解消することを考えると、現行の第1世代モデルを定価でオーディオファイルに推奨することは極めて困難である。

最終的な推奨プロファイルは以下の通りとなる。

  • 推奨できるユーザー:
    • 音質よりもANC性能を最優先する「静寂第一主義者」。
    • 長距離フライトを頻繁に利用する「フリークエントフライヤー」。
    • 快適性を何よりも重視するBoseブランドの忠実なファン。
    • 本製品を大幅な割引価格で入手できる機会がある場合。
  • 注意を要するユーザー:
    • 購入してすぐにニュートラルな音質を求めるクリティカルなリスナー。
    • 機材をタフに扱う傾向があり、耐久性を重視するユーザー。
    • 主な使用シーンが屋外での歩行中であるユーザー。
  • 待つことを推奨するユーザー:
    • 可能な限り最高の音質を追求し、より将来性のある機能セットを求める純粋なオーディオファイル。この層のユーザーにとって、第2世代モデルの登場を待つことが、最も賢明な行動であることは間違いない。

総合評価:★★★☆☆ (3.5/5)

この評価は、本製品が持つ深い矛盾を反映している。ノイズキャンセリングと快適性という点ではほぼ完璧に近い性能を達成しており、特定の用途においては最高の選択肢となり得る。しかし、オーディオファイルが重視する音の忠実性、ビルドクオリティ、そして将来性において看過できない妥協点が存在するため、万能の傑作とは言えない。特定の目的に特化した優れた道具であり、普遍的な名機ではない、というのが我々の結論である。

引用文献

  1. History – Bose Aviation Headsets, https://boseaviation.com/about/history/
  2. Meet The Indian-American Engineer Who Created The First Noise-Cancelling Headphones, https://homegrown.co.in/homegrown-creators/meet-the-indian-american-engineer-who-created-the-first-noise-cancelling-headphones
  3. How a “Genius” Engineer Designed the First Noise Cancelling Headsets, https://www.thebroadcastbridge.com/content/entry/1946/how-a-genius-engineer-designed-the-first-noise-cancelling-headsets
  4. ボーズ BOSE ノイズキャンセリングヘッドホン 空間オーディオ/Bluetooth対応 ブラック QuietComfort Ultra Headphones BLK - ヨドバシ, https://www.yodobashi.com/product/100000001008094187/
  5. List of Bose headphones - Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Bose_headphones
  6. Why are QuietComfort Ultra Headphones sold so cheaply in Japan online? - Reddit, https://www.reddit.com/r/japan/comments/17tkolt/why_are_quietcomfort_ultra_headphones_sold_so/
  7. Bose QuietComfort Ultra Headphones (第2世代)のご購入はこちらから | ボーズ, https://www.bose.co.jp/ja_jp/products/headphones/noise_cancelling_headphones/QCUH2-HEADPHONEARN.html
  8. ブルートゥースヘッドホン (空間オーディオ対応) QuietComfort Ultra Headphones Black QCULTRAHPBLK [ノイズキャンセリング対応 /Bluetooth対応] BOSE - ビックカメラ, https://www.biccamera.com/bc/item/12154526/
  9. QuietComfort Ultra Wireless Noise Cancelling Headphones - BOSE, https://www.bose.co.jp/ja_jp/products/headphones/noise_cancelling_headphones/bose-quietcomfort-headphones-ultra.html
  10. QuietComfort Ultra Wireless Noise Cancelling Headphones - Bose, https://www.boselatam.com/en_ar/products/headphones/noise_cancelling_headphones/bose-quietcomfort-headphones-ultra.html
  11. Bose QuietComfort Ultra Wireless Noise Canceling Over-Ear Headphones (Black) - B&H, https://www.bhphotovideo.com/c/product/1785029-REG/bose_880066_0100_quietcomfort_ultra_wireless_noise_canceling.html
  12. Bose QuietComfort Ultra Headphones, https://www.bose.com/p/headphones/bose-quietcomfort-ultra-headphones/QCUH-HEADPHONEARN.html
  13. Bose QuietComfort Ultra Headphones review - SoundGuys, https://www.soundguys.com/bose-quietcomfort-ultra-headphones-review-103901/
  14. Bose User Warns People to “avoid Bose QC Ultra at all costs” | Headphonesty, https://www.headphonesty.com/2024/01/user-lists-reasons-avoid-bose-qc-ultras/
  15. Bose QuietComfort Ultra Review - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=x_5qrD6aLeY
  16. Spoiler: Bose QC Ultra (2nd Gen) Headphones - Reddit, https://www.reddit.com/r/bose/comments/1memdfo/spoiler_bose_qc_ultra_2nd_gen_headphones/
  17. Poor Quality of Comfort Ultra Ear Cups : r/bose - Reddit, https://www.reddit.com/r/bose/comments/1fjujdi/poor_quality_of_comfort_ultra_ear_cups/
  18. Bose QC35 Ear Cushions worn out in an year with light usage! Is it normal? - Reddit, https://www.reddit.com/r/bose/comments/othfcd/bose_qc35_ear_cushions_worn_out_in_an_year_with/
  19. Replacing the ear cushions | Bose QuietComfort Headphones, https://support.bose.com/s/article/bose-quietcomfort-headphones-replacing-the-ear-cushions?language=en_US
  20. Fix Your Bose Ultra Headphones in 90-Seconds Ear Pad Replacement Repair Guide QC Ultra - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=v5Weqn3TMvc
  21. Review of the new Bose QuietComfort Ultra Headphones (over ear) tap to read - Reddit, https://www.reddit.com/r/bose/comments/171nf6b/review_of_the_new_bose_quietcomfort_ultra/
  22. Bose QuietComfort Ultra Earbuds (2nd Gen) review - What Hi-Fi?, https://www.whathifi.com/headphones/wireless-earbuds/bose-quietcomfort-ultra-earbuds-2nd-gen
  23. Bose QuietComfort Ultra Earbuds, https://www.bose.com/p/earbuds/bose-quietcomfort-ultra-earbuds/QCUE-HEADPHONEIN.html
  24. Nothing Headphone (1) vs Bose QuietComfort Ultra Headphones: Can the $299 upstart beat Bose? - SoundGuys, https://www.soundguys.com/nothing-headphone-1-vs-bose-quietcomfort-ultra-headphones-140903/
  25. Bose QuietComfort Ultra Headphones vs Bose QuietComfort Headphones - SoundGuys, https://www.soundguys.com/bose-quietcomfort-ultra-headphones-vs-bose-quietcomfort-headphones-104085/
  26. Bose QuietComfort Ultra Headphones vs Sony WH-1000XM5 - SoundGuys, https://www.soundguys.com/bose-quietcomfort-ultra-headphones-vs-sony-wh-1000xm5-104454/
  27. Bose QuietComfort Ultra headphones sound muddy - Reddit, https://www.reddit.com/r/headphones/comments/1fpkv76/bose_quietcomfort_ultra_headphones_sound_muddy/
  28. New Bose QuietComfort Ultra headphones and earphones/earbuds coming soon, and QCSE/45 is reduced | Audio Science Review (ASR) Forum, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/new-bose-quietcomfort-ultra-headphones-and-earphones-earbuds-coming-soon-and-qcse-45-is-reduced.47181/
  29. Bose Unveils the Next Generation of the QuietComfort Ultra Headphones | TechPowerUp, https://www.techpowerup.com/340905/bose-unveils-the-next-generation-of-the-quietcomfort-ultra-headphones
  30. Sony WH-1000XM6 Noise-Canceling Wireless Over-Ear Headphones (Black) - B&H, https://www.bhphotovideo.com/c/product/1894980-REG/sony_wh1000xm6_b_wh_1000xm6_noise_canceling_wireless_over_ear.html
  31. Bose QuietComfort Headphones 2 wishlist: All the features I want to see - SoundGuys, https://www.soundguys.com/bose-quietcomfort-headphones-2-131060/
  32. Bose QuietComfort Ultra Earbuds (2nd Gen) Review: The Best Noise-Cancelling Earphones We’ve Tested | PCMag, https://www.pcmag.com/reviews/bose-quietcomfort-ultra-earbuds-2nd-gen
  33. Bose Announces QuietComfort Ultra Headphones (2nd Gen)! - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=e_hKji_nTac
  34. Bose QuietComfort Ultra Headphones review: sound quality and …, https://www.whathifi.com/reviews/bose-quietcomfort-ultra-headphones-review
  35. Bose QuietComfort Ultra Headphones Review | Tested, https://www.techgearlab.com/reviews/audio/wireless-headphones/bose-quietcomfort-ultra-headphones
  36. Bose QuietComfort Ultra Review: WORTH IT in 2025? - RecordingNOW.com, https://recordingnow.com/blog/bose-quietcomfort-ultra-review/
  37. Bose QC Ultra Headphones: Top tier noise cancelling : r/headphones, https://www.reddit.com/r/headphones/comments/1786q4q/bose_qc_ultra_headphones_top_tier_noise_cancelling/
  38. Rtings.com Bose Quietcomfort Ultra headphones Review - for Insiders - Reddit, https://www.reddit.com/r/bose/comments/17m34mk/rtingscom_bose_quietcomfort_ultra_headphones/
  39. RTINGS Bose Ultra Headphones Review - Reddit, https://www.reddit.com/r/bose/comments/17pzo8z/rtings_bose_ultra_headphones_review/
  40. “Popping” sound/s when walking heavy/running with QuietComfort Ultra : r/bose - Reddit, https://www.reddit.com/r/bose/comments/18dzjb3/popping_sounds_when_walking_heavyrunning_with/
  41. Sennheiser Momentum 4 | True Wireless Hi-Fi Earphones - Bloom Audio, https://bloomaudio.com/products/sennheiser-momentum-4-mtw4-tws
  42. WH-1000XM6 Wireless Noise Cancelling Headphones - Moon Audio, https://www.moon-audio.com/products/sony-wh-1000xm6-wireless-noise-cancelling-headphones
  43. Sony WH-1000XM6 Best Wireless Noise Canceling Headphones, https://electronics.sony.com/audio/headphones/headband/p/wh1000xm6-b
  44. MOMENTUM 4 Wireless | Sennheiser United States, https://www.sennheiser-hearing.com/en-US/p/momentum-4-wireless/
  45. Sennheiser Momentum 4 Wireless Headphones - Bluetooth Headset for Crystal-Clear Calls with Adaptive Noise Cancellation, 60h Battery Life and Customizable Sound, Graphite - Walmart, https://www.walmart.com/ip/Sennheiser-Momentum-4-Wireless-Headphones-Bluetooth-Headset-Crystal-Clear-Calls-Adaptive-Noise-Cancellation-60h-Battery-Life-Customizable-Sound-Graph/5262188350
  46. Sony WH-1000XM6 vs Bose QuietComfort Ultra Headphones - SoundGuys, https://www.soundguys.com/sony-wh-1000xm6-vs-bose-quietcomfort-ultra-headphones-137869/
  47. Bose QuietComfort Ultra Headphones 価格比較, https://kakaku.com/item/J0000042682/
  48. Shop Bose QuietComfort Ultra Headphones (2nd Gen), https://www.bose.com/p/headphones/bose-quietcomfort-ultra-headphones-2nd-gen/QCUH2-HEADPHONEARN.html
  49. Bose Unveils the Next Generation of the QuietComfort Ultra Headphones, https://www.bose.com/pressroom/bose-unveils-the-next-generation-of-the-quietcomfort-ultra-headphones
  50. Bose QuietComfort Ultra Headphones 2nd Gen land, boasting even better ANC, USB-C audio and a much-needed battery bump | TechRadar, https://www.techradar.com/audio/headphones/bose-quietcomfort-ultra-headphones-2nd-gen-arrive-all-you-need-to-know
  51. Bose Unveils the Next Generation of the QuietComfort Ultra Headphones - TechPowerUp, https://www.techpowerup.com/forums/threads/bose-unveils-the-next-generation-of-the-quietcomfort-ultra-headphones.340905/
  52. Bose QuietComfort Ultra headphones review: supreme comfort and noise cancelling, https://www.theguardian.com/technology/2023/nov/06/bose-quietcomfort-ultra-headphones-review-supreme-comfort-and-noise-cancelling
  53. Bose QuietComfort 35 II Review (Noise Cancelling Headphone), https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/bose-quietcomfort-35-ii-review-noise-cancelling-headphone.20584/
  54. Bose QuietComfort Ultra Headphones 2 debut with USB Audio - SoundGuys, https://www.soundguys.com/bose-quietcomfort-ultra-headphones-2-135860/

関連記事